2024年5月1日(水)

Wedge REPORT

2023年11月15日

 筆者は2007年より「平日は東京で暮らし、週末は千葉県・南房総の里山で暮らす」という二拠点生活を続けている。我が家の3人のこどもたちは、小学校卒業までは野山や海で思いっきり遊ぶ週末を過ごしてきた。

 そして現在、それぞれ高校受験、大学受験、大学院受験に挑んでいる。「3人とも受験戦争真っただ中とは! 大変ですね」としばしば言われるが、親のやれることはほとんどない。本人たちは通常運行で、行事や部活に追われない日々はむしろ以前よりゆとりがあるように見える。

(maruco/gettyimages)

 今回は、二拠点生活と受験戦争の関係について考えてみたい。といっても「二拠点生活をしたら受験戦争に勝てますよ」という話にはならなそうだ。むしろ〝戦争〟には参加せずに勉強することはできないか、我が家の二拠点生活の事例をみながら筆者とともに考えていただければと思う。

知らないことを知るのは、楽しくて興奮すること

 目的の分からない勉強ほど辛いものはない。「受験」は目的だと思いがちだけれど、実は知ることの喜びとは直結していない。本来、「知らないことを知る」のはとても楽しいことで、こどもたちは二拠点生活でそれをしばしば実感していたと思う。

 わたしたちが二拠点生活を始めたのは、生きもの好きの息子が生まれ落ちてしまったのが東京23区内という悲劇がきっかけだ。図鑑で覚えた虫たちを捕まえてみたいなあ! と思っても暮らしているのは都心の住宅地。大人には便利な都市生活だが、ここではこどもの好奇心は満たされない。

 そうして始めた週末の里山暮らしでは、生きもの探訪を繰り返した。草地にしゃがめば虫たちに出会えるし、トラップを仕掛ければ一晩で多様な甲虫が集まってくる。川の石をどかせば下に棲む生きものたちを発見できる。

 いろいろな可食の野草を茹でたり揚げたりして「うっ、ヤブカラシえぐい……。やっぱり野菜ってよくできているなぁ」と感心したり、ウルシの葉を腕に擦りつけて「本当だ、腫れる!」と確認する。


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