世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年10月10日

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 9月16日付米Wall Street Journal紙で、Douglas J. Feith元米国防次官は、シリアの化学兵器破棄に関する米露合意は、結局のところ、世界中の独裁者に、化学兵器の有用性を説いてしまったようなもので、化学兵器は、逆説的に、拡散する危険がある、とオバマの外交政策を批判しています。

 すなわち、バシャール・アサドは、歴史上、最も上手く化学兵器を使用することに成功した人物かもしれない。この8月21日にダマスカスでサリン攻撃がなされるまでの2年間、オバマ大統領は、シリアの独裁者は、「去るべきである」と述べてきた。最早、そう言うことはない。この1ヵ月の間に、アサドは、無法者の虐殺者から、軍縮のパートナーに成り上がった。

 現在の米国の対シリア政策の焦点は、虐殺に関するものでもなければ、人道上や難民問題、又は、イランやヒズボラ勢力に係るものでもない。オバマ政権の対シリア政策は、プーチン露大統領の助けを借り、化学兵器の軍縮に集中したものになっている。

 ケリー米国務長官は、1925年のジュネーヴ議定書に違反してアサドが神経ガスを使用したと非難しながらも、化学兵器の軍備管理計画で、アサドの協力を得ようと苦心している。米国の対シリア政策は、アサド政権の失脚でもなければ、それを求めるシリア国民を奨励することでもない。オバマ大統領は、今や、アサド政権を維持することに米国の利益を見出している。

 アサドは、最早、退任するのではなく、政権に止まらなければならない。何故なら、彼は、シリアの化学兵器破棄の合意を交渉し、実施するのに必要な存在だからだ。そして、この合意は、成功裡に交渉がまとまれば、その実施には、何年もかかるだろう。

 シリアの反体制派は、米国が、単に立場を後退させるためだけに軍事攻撃の可能性を示唆したことに、憤慨し、不信感を募らせている。イランは、米国が暫く中東では軍事行動を取らないことに安堵している。ロシアは、アサドの悪の共犯者であることには変わりはないが、その非難されるべき共犯者から、不可欠な平和交渉者へと格上げされた。

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