⑥ ハンターの養成
テレビで放映されていたのだが、牛舎に侵入して牛の飼料をあさっていたクマ5頭が、牛舎から出ていくところを手練れのハンターたちがライフルで射撃した。1人が3頭、もう1人が1頭を射殺し、1頭は逃げた。
50mほどの距離だっただろうか。実に見事な腕前だったが、このようなハンターはなかなか養成できるものではない。射撃術もさることながら、行き届いた安全への配慮、殺生に対する敬虔さとか。何より一流の人格が求められる気がした。
⑦ クマへの給餌
捕獲されるクマが可哀想だと、ドングリなどを集めて奥山で給餌しようとする人がいる。どの程度の量を撒くのか知らないが、多くのクマの必要量を賄うことなどできるわけがない。自分の満足感が得られるだけである。
もしクマたちが満足するまで給餌したら、クマがどんどん増えてさらに混乱が広がるだけである。クマにとっても人にとっても幸せなことにはならない。
今後のクマ対策
暑かった余波もようやく収まり、本格的な冬となってクマたちも冬眠に入る。クマ騒動に巻き込まれた人々もやっと安心して暮らせるようになる。
のど元過ぎれば熱さを忘れるではないが、クマは毎年今年のように頻繁に出没するわけではないから、すぐに関心がうすれてしまうだろう。しかし、その間に基礎的な調査をしっかりやって数年先に必ずやってくる次の頻繁出没年に備える必要がある。
もとより分厚い森林がクマたちの行動の実態を隠しているから調査は容易でないが、継続的に行って生息数等のデータを得ないと、人との共存を図るための適正な管理方法が見いだせない。地道な調査の継続とデータの蓄積が重要である。
クマによる人身被害の多発を受けて、環境省は11月10日に閣議決定された補正予算案に、人間の生活圏に出没するクマの生息状況調査などの対策費として7300万円を計上した。ちょっと気になるのは太字の「人間の生活圏に出没するクマ」という部分である。奥山も含めて全体像をとらえないと、根本的な解決にはならないからだ。
とりあえず人命が危険にさらされる限りは、駆除もやむを得ない。学習能力の高いクマが人を襲っても何でもないと知れば、子グマに引き継がれ、クマの里や市街地への進出は止まらなくなる。特に子どもたちの保護が優先されるべきである。装甲車を使って通学させたいぐらいだ。
人材育成も急務である。研究者、ハンター、国や地方自治体の行政官など。彼らはクマだけを担当するだけでなく、日本の環境行政の担い手として育成すべきである。