2024年5月14日(火)

World Energy Watch

2023年12月27日

 22年の世界のエネルギー起源CO2排出量368億トンのうち、石炭は155億トンを排出している。化石燃料生産時に排出されるメタンなどを含めたエネルギー起源温室効果ガス排出量は、CO2換算413億トンなので石炭は約38%を占めている(図-1)。

 2000年に89億トンだった石炭からのCO2排出量は2000年代に増加したが、10年代は年間150億トン前後で推移している(図-2)。欧米では石炭火力が削減されたものの、中国、インドなどの途上国での増設があり、石炭消費量もCO2排出量も減少していない。

 石炭からのCO2排出量は単位当たりでも絶対量でも多いものの、化石燃料の中で石炭が悪役を押し付けられる背景には欧米の事情もある。

炭鉱がなくなった欧州諸国

 欧州の石炭火力発電所は、国内で生産される石炭を燃料として使用するため内陸部の炭鉱の隣接地に建設された。石炭の輸送費は高いので、炭鉱の隣で発電し電気の形にしての送電が最も経済性がある。

 ところが、欧州内の炭鉱の地質条件の悪化に伴い生産量は減少を始めた。同時に石炭火力発電所の老朽化も進んできた(「実は減らない世界の石炭火力発電、欧米の石炭火力を減らしたのは市場の力」 )。

 石炭生産量の減少と設備の老朽化は同時に進行した。英国の例が示す通りだ(図-3)。そうすると老朽化した上に燃料供給で問題がある石炭火力を廃止し、自国で生産する天然ガスを利用する発電設備を新設するのが有利だ。

 他の欧州主要国でも石炭生産量は減少しほぼゼロになったので(図-4)、石炭火力の閉鎖が続いた。天然ガス生産国でなくても、ロシアからの価格競争力のある天然ガスを利用する火力で代替できた。

 欧州諸国は、必ずしも温暖化対策のため石炭火力を閉鎖したわけではない。ドイツは、閉鎖した石炭火力発電所を昨年の冬に続いて今年10月から来年3月末まで稼働させる。英国も同様に稼働する。CO2よりも安定供給優先だ。


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