2024年11月21日(木)

World Energy Watch

2023年12月27日

 12月13日に閉幕した国連気候変動枠組み条約第28回締約国会合(COP28、パリ協定第5回締約国会合でもある)では、グローバル・ストックテイクと呼ばれるパリ協定の実施状況を検討し進捗を評価する仕組みについて、初めての決定が採択された。

(NirutiStock/LysenkoAlexander/gettyimages)

 決定文書では、2030年までに19年比全地球の温室効果ガスの43%、35年までに60%削減、50年脱炭素実現のため、30年までに世界の再生可能エネルギーの発電設備容量3倍、省エネ改善率2倍の実現への各国の貢献が要請された。

 今回の決定文書では、初めて、低炭素技術として原子力の利用加速も盛り込まれた。道路輸送部門では、電気、燃料電池車の排出ゼロ車と並び低排出車(low-emission vehicles)の導入による削減が謳われたが、低排出車は定義されていない。

 化石燃料からの移行がCOPの決定文書に初めて盛り込まれたと話題になったが、温暖化問題で最大の悪役は石炭だ。決定文書は対策が取られていない石炭火力発電所の段階的削減の加速化も述べている。

 COPの場でも、欧米諸国は脱石炭火力に一生懸命だ。日本が脱石炭の期限を明確にせず、石炭火力での水素・アンモニア利用を図るのは、石炭火力の延命策と、いちゃもんを付ける環境活動家もいる。

 欧米諸国は脱石炭連盟を結成しているが、先進7カ国首脳会議(G7)国では日本だけが参加しないことを盾に、日本の取り組みは遅れていると非難するマスメディアもある。

 活動家、一部メディアは日本の石炭火力の早期廃止を囃し立てるが、石炭火力の廃止は日本のエネルギー価格を上昇させるので、国の競争力を削ぎ経済に大きなマイナスの影響を与える。

 石炭火力の廃止が痛くも痒くもない欧米諸国と日本をはじめとするアジア諸国の事情は大きく異なる。温暖化対策の名の下、国の経済競争も行われていると認識すべきだ。エネルギー温暖化問題は私たちの給与にも影響を与えるのだから、身近な問題として考えなければいけない。

なぜ石炭は悪者か

 石炭は、二酸化炭素(CO2)を排出する化石燃料の中でも最も排出量が多い。単位発熱量当たりでは、石油の1.3倍、液化天然ガス(LNG)の1.8倍のCO2を排出する。

 石炭、石油、天然ガスは世界の一次エネルギーの約8割を供給しており、石炭は全体の約27%を占めエネルギー利用では石油よりも供給量が多い最大のエネルギー源だ。発電部門は世界のCO2排出量の約4割を排出するが、石炭火力は発電量の36%を供給する最大の発電源でもある。


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