2024年12月3日(火)

World Energy Watch

2023年12月4日

 11月30日から開催されている気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)において、議長国アラブ首長国連邦(UAE)は30年までに世界の再生可能エネルギー(再エネ)設備を3倍増にすることを提案し、100以上の参加国が賛同した。

 2050年脱炭素のためには化石燃料を利用する火力発電から、二酸化炭素(CO2)を排出しない再エネと原子力に電源を移行する必要がある。輸送部門でも内燃機関自動車は電気あるいは水素を燃料とする自動車の利用に切り替わるはずだ。

 この実現には超えるべき調達の壁がある。太陽光、風力発電設備ともに火力、原子力発電設備との比較では大量の鉱物、セメント、アルミ、鉄を必要とする。その中でも、今後調達量が増える重要鉱物と呼ばれる希少な金属資源の確保が課題だ。

(Ladislav Kubeš/AlionaManakova/gettyimages)

 太陽光発電設備には、セレン、ガリウムなど、風力発電設備にはレアアースなどが必要だ。電気自動車(EV)にも電池の原料としてリチウムなどが必要になる。

 今年4月札幌で開催された主要7カ国首脳会議(G7)環境エネルギー大臣会合では、脱炭素に必要になる重要鉱物確保についての声明がだされ「透明性のあるルールや市場構築。独占、市場操作などに反対。生産国と消費国の対話」が掲げられた。

 今年10月末に大阪で開催されたG7の貿易相会合では重要鉱物の調達に関する協力関係の強化が議論された。脱炭素には重要鉱物が極めて重要になる。

世界は化石エネルギー資源から鉱物資源依存に

 主要国は2050年、中国は60年、インドは70年の脱炭素を目指している。脱炭素のためには、CO2を排出する石油、石炭、天然ガスの化石燃料消費量の削減が必要になる。

 しかし、世界の一次エネルギー供給の約8割は化石燃料が担っている。中国は8割以上を化石燃料に依存し、日本、米国も化石燃料依存度が8割を超えている。インドでは化石燃料比率が低いが、薪などの伝統的なバイオマスの使用が多いためだ。

 世界の先頭を切って脱炭素を進めている欧州諸国も、原子力依存度が高いフランスを除けば依然として8割近くを化石燃料に依存していることに変わりはない(図-1)。

 脱炭素のためには石炭、石油、天然ガスを燃料とする火力発電所を再エネあるいは原子力の電源に転換する必要がある。


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