2024年12月22日(日)

World Energy Watch

2023年10月4日

 岸田文雄首相が9月25日に経済対策を発表し、関係閣僚が具体策を10月中にまとめることになった。

 対策への期待を問うネットでのアンケートでは大多数が「期待しない」と答えているが、無理もない。5本柱とされた対策の中身は、今までの成長戦略の焼き直しのように見えてしまう。

 内閣官房のホームページには2013年以降の毎年の成長戦略が掲載されているが、今回打ち出された国内投資促進、リスキリング、デジタル行政改革などは、過去10年間の成長戦略の内容と、ほとんど被っている。

実現していない成長戦略

 今までの成長戦略は具体的な目標も掲げていたが、多くは実現していない。例えば、13年の「新たな成長戦略 ~「日本再興戦略-JAPAN is BACK-」~ 日本産業再興プラン(成長戦略2013)」では、今後10年間で世界大学ランキングトップ100にわが国の大学10校以上にとある。

 9月27日に英国のタイムズ・ハイヤー・エデュケーションが発表した今年の世界大学ランキングでは、東京大29位、京都大55位の2大学が100位以内にあるだけだ。共同通信は「他の大学も順位を上げ、日本の躍進が目立った」と伝えている。皮肉に聞こえる。

 むろん自公政権の成長戦略の目標だけが実現しなかったわけではない。

 政策を批判している民主党政権の2010年の成長戦略の目標は、太陽光などの環境ビジネスで20年に出荷額50兆円増、雇用140万人創出だった。これを実現したのは中国においてだった。日本の太陽光パネルの輸入比率は9割を超えた。

 イノベーション、経済成長が簡単に実現できるのであれば、日本は失われた30年間を経験することはなかった。成長戦略には妙案がないので言葉を変え同じアイデアが使われているのが実態だ。

(hxdyl/gettyimages)

 失われた30年を経験する間に日本の少子化は避けられなくなり、将来の国内市場の縮小は明確になった。日本の輸出の伸びも世界全体の成長と比較すると小さく、貿易でもシェアを失っている。

 国内外の市場が縮小する中で企業は国内に投資し成長を目指すのだろうか。成長に資するわかりやすい政策は、企業が負担するコスト、エネルギー価格を下げ収益増を図り賃上げすることだ。

 日本は先進国の中ではドイツと並びエネルギー多消費型企業の比率が高く、エネルギー価格が収益に与える影響は大きい。家計もエネルギー価格の負担が減れば助かる。

 今回の政策の中にもエネルギー価格の負担減が謳われているが、補助金により価格を抑制する策だ。補助金は長く続けることはできないし、長期化すれば市場を歪める。恒常的にエネルギー価格を低減し、企業と家庭を支援する政策が必要とされる。

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