2024年2月26日(月)

経済の常識 VS 政策の非常識

2023年9月12日

 エネルギー価格の高騰に対して、日本ではエネルギー関連の補助金で乗り切ろうとしている。この補助金は2023年9月末までで6兆円、12月まででさらに1.2兆円かかるようである(「ガソリン15年ぶり最高値」日本経済新聞2023年8月31日)。安易に補助金を支給し続けていて良いのだろうか。

ガソリンの高騰に対し、政府は補助金で対応している(西村尚己/アフロ)

エネルギー補助金は豊かな人への支援

 これは長期的にはまずい効果をもたらすと言える。なぜなら、多くの人が指摘していることだが、エネルギー価格の高騰は、エネルギーが足りないことを示すものだ。あるいは二酸化炭素(CO₂)の排出を抑えて気候変動を抑制しなければならないのに、価格を抑えていたら、これまで通りエネルギーを使って良いというシグナルを送ることになる。

 1970年代初期のエネルギー価格高騰では、日本はエネルギー価格の上昇をそのまま価格に転嫁させていた。その結果、日本は個々の産業でエネルギー節約が進み、また、エネルギー多消費型産業が縮小し、エネルギー節約型の産業が拡大し、全体として省エネ型の産業構造となった。70年代には合理的な政策を採用できたのだが、現在は出来ていない(本欄「東京都の「おこめクーポン」 なぜ物価対策に現物支給なのか」2023年3月29日、でもこのことを解説している)。

 エネルギー価格の高騰が生活に打撃を与えていることは事実であるから、エネルギー消費を抑えても生活水準が維持できるように、むしろ所得補助によって対応すべきだ。エネルギー補助金は、エネルギーをより多く使う豊かな人への補助金にもなる。貧しい人は車を持てず、豊かな人ほどガソリンを食う大型車に乗っているのではないか。

 7.2兆円あれば、約1200万世帯の住民税非課税世帯に1世帯当たり61万円配れることになる。実際にこれだけ配るべきだと言っている訳ではないが、さまざまな手段を比較検討すべきだろう。

 エネルギー補助金は、当然に財政赤字を7.2兆円拡大させる。こういう数字を見ると、財政赤字で大変だという人々が、本当に真剣に財政赤字の拡大を止めようとしているのか、筆者は疑問に思う。

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