ガソリン価格上昇の要因
ガソリン価格上昇の要因を考えるために、データを整理しよう。図1は、原油価格とガソリン価格の関係を示したものである。
原油がタンカーで運ばれ、石油精製工場でガソリンになり、全国のガソリン・スタンドに運ばれて販売される。ごく大雑把に言えば、石油元売会社の原材料コストは、円建てでの原油価格である。
図には、1リットル当たりの原油価格(WTI)と1リットル当たりのガソリン価格を示している。するとこの差は、石油会社の費用、税金、利益ということになる。費用、税金、利益を併せてマージンと呼んでおく。
ここでガソリン価格を引き下げるための補助金は元売に支給されて、その結果、ガソリン価格が安くなるものであるから、実際のガソリン価格-1リットル当たりの原油価格+1リットル当たりの補助金がマージンとなる。
マージンは、図の緑の線で示している。ここで2001年の前半まで110円以下だったマージンが120円程度に上昇している。マージンは110円が適正なのか、120円が適正なのかは分からないが、タンカーで運び精製して全国のガソリン・スタンドに運び、かつ石油税も負担しなければならないから、それなりにコストがかかるだろう。
ガソリン価格上昇の分解
ガソリン価格の上昇は、本来のドル建てで原油価格の上昇、円安による原油価格の追加的な上昇、マージンの拡大、ガソリン補助金による低下効果で説明できるはずである。原油価格など関連する指標が落ち着いていた20年8月と直近のデータが揃う23年7月とで比べてみよう。これを整理したのが表1である。
まず、ガソリン価格は135.4円から174.3円まで38.9円上昇した。もし円レートがこの間で動かなければ原油価格は23円上昇、円の下落により原油価格は15円上昇、マージンは12.5円拡大した。すなわち、38.9円の上昇のうち、原油価格の上昇が22.7円、円安による上昇が16.9円、マージンの上昇が12.5円である。
マージンの上昇分は無視できない大きさである。これらで合わせて52.1円上がるところが、補助金の押し上げ効果13.2円のより、38.9円の上昇で済んだということである。