経済産業省が公表した8月28日の全国平均のレギュラーガソリン価格は、1リットル(L)当たり185.6円。15週連続の値上がりで、15年ぶりに高値を更新した。
政府は2022年1月からガソリン価格の激変緩和措置を導入し、補助金により価格を抑制してきた。2.5円から始まった補助金額は、22年6月の1L当たり最大41.9円から今は10.4円に縮小している。
岸田文雄首相は、ガソリン価格上昇を受け価格を175円程度に抑制する目標の下、9月末に終了予定だった補助金を年末まで継続すると発表した。政府のガソリン価格への補助金の継続に関するマスコミの評価は割れている。
批判の一つは、一時的措置として始まった補助金がずるずると継続され出口戦略が見えないことに対してだ。脱炭素に向かい内燃機関自動車から電気自動車(EV)あるいは燃料電池車(FCV)への切り替えを促すべき流れにガソリン価格の補助は逆行するとの批判もある。
補助金により価格を抑制する手法に対しても批判がある。ガソリン価格に含まれる上乗せ分を元に戻し、ガソリン価格を下落させるべきとの主張だ。
ガソリン価格は生活に直接影響を与える。なぜ上がったのだろうか。上乗せ分を元に戻し値下げすればよいのだろうか。そもそも補助金により価格を抑制する政策は正しいのだろうか。欧米の現状はどうだろうか。
ガソリン価格はなぜ上がったか
世界一の化石燃料輸出国ロシアのウクライナ侵略は、石油、石炭、天然ガスの価格上昇を引き起こした。侵略開始翌月の昨年3月の欧州の原油指標、ブレント原油の月間平均価格は、1バレル当たり100ドルを超えた。
その後5カ月の間100ドルを上回っていたが、昨年末には侵略前を下回るレベルにまで下落した。1キロリットル(KL)当たりのブレント原油の価格と日本の原油の輸入価格の推移を図-1に示したが、日本の輸入価格はブレント原油との比較では下落幅が小さい。
22年初めから円安が進んだためだ(図-2)。22年年初との比較では、円は約2割安くなった。輸入価格も2割上がったことになる。ドル建ての原油価格は下がったが、輸入価格は大きく上昇した。
昨年1月のブレント原油の1L当たり価格は53.8米セント、12月には50.9セントだった。一方、日本の1月の輸入価格1L当たり約58円は、12月には82円に跳ね上がっていた。円安でなければ、昨年末の時点で補助制度も終了していたはずだ。