EUのように、急激なエネルギー価格上昇に見舞われた際に短期間補助することはありえるだろう。しかし、長期間一律に補助を行うべきではない。
日本では、ガソリン価格が物価に与える影響も欧米よりも小さい。所得を考慮したうえでの、補助制度を考えるべきだろう。
ガソリン価格と脱炭素
ガソリン価格が上昇すれば、EVあるいはFCVへの転換が進み、脱炭素に寄与するので補助すべきでないとの主張もある。
ガソリン価格は、それほど自動車を購入する際の意思決定を左右するのだろうか。表の前提を置き計算すると、EVの電気代がガソリン車をかなり下回る。仮に年間1万km走るとすると、約7万円の差だ。
実際には外出先での充電にかかる追加費用などもあるので、差はもう少し小さいかもしれないが、年間7万円の燃料代の差は、国、地方自治体からの補助金を考慮しても車体価格が高くなるEV選択に十分だろうか。
毎年の電気料金とガソリン価格の差は拡大するのか縮小するのか、よく分からないし、利便性も異なると考えると、よほど車体の価格差が小さくなければ、毎年7万円ほどの燃料費と電気代の差でEVを選択する人は少ないように思う。
ガソリン価格が10円上がっても年間1万kmの走行を前提にすれば、年間6000円の負担増だ。ハイブリッド車との比較であれば、もっと差は小さい。ガソリン価格は選択に大きな影響を与えないのではないか。
今年7月のEV(バッテリー稼働とプラグインハイブリッド)とFCVの販売シェアは3.5%だった。ガソリン価格の上昇が販売を増やしたようにも見えない。
輸送部門の脱炭素には、ガソリン価格はあまり影響を与えていないようだ。脱炭素には異なる戦略が必要だ。
編集部からのお知らせ:本連載でもエネルギーを解説する山本隆三氏が著書で、ロシアのウクライナ侵攻に関わるエネルギー問題など、わかりやすく解説しています。詳細はこちら。