合理的政策を採用できない日本
エネルギー価格の高騰に対して補助金で対応するのは、すでに述べた理由により望ましくない。補助金よりも石油税の一時的減税が、マージンの拡大という問題を惹起しないので望ましい。
ガソリン税には、トリガー条項があって、レギュラーガソリンの価格が1リットル当たり160円を3カ月連続で超えた場合、ガソリン税の上乗せ分(25・1円)の課税を停止、減税する。発動後、1リットル当たり130円を3カ月連続で下回れば、税率を元に戻すことになっている。
2010年に導入されたが、一度も発動されていない。補助金はいつ終えるか分からないが、トリガー条項は止める場合も決まっているので良いのではないかと筆者は思う。ただし、このところガソリン価格が高止まっているようなので、130円を引き上げるべきかもしれない。
政府の立場では、一度取った税金は何としてでも戻したくないということだろう。しかし、減税にしても長期的なエネルギー節約に結び付かないので望ましくない。
エネルギー価格の高騰に補助金で対応するのは、開発途上国で広範に見られた政策だ。ところが、14~15年にかけてアジア新興諸国は、相次いで燃料補助金を廃止した。理由は、エネルギー補助金が非合理だということと、財政赤字を抑制するためだ。インドネシアでは、これによって、予算をインフラ整備に回すことができるようになり、投資環境を改善できたという。
しかし、18年になってインドネシアやマレーシアで再び燃料補助金が復活した(塚田雄太「アジア新興国で復活する燃料補助金」日本総研アジア・マンスリー 2018年9月号、2018年08月20日)。これは今も続いている。
日本は、70年代には合理的な政策が採用できたのだが、現在はそうではない。エネルギー価格の上昇よりも、日本がそうなってしまったことが問題かもしれない。