2024年12月22日(日)

経済の常識 VS 政策の非常識

2023年3月29日

 東京都が物価高対策として、2月下旬から4月末にかけて国産のコメや野菜などの食材と引き換えることができる「東京おこめクーポン」を配布している。江戸時代かと思わせるような施策である。

(Wako Megumi/gettyimages)

 物価高対策として、当然、①補助金を支給して無理やり物価を上がらないようにする、②物価高による家計の打撃を和らげるように直接、家計に補助金を支給する、③家計への補助を現物支給にする、という方法が考えられる。それぞれの対策について順次考えて行こう。

政府の物価対策は市場を歪める

 政府の物価対策では、補助金を払ってエネルギー価格を抑える、国が独占的に輸入している小麦などの売り渡し価格を引き下げるということが行われている。エネルギーにも食糧にも実態上高額の税が課せられているのだから、減税して配っていることになる。

 これまでの税率が正しいとすれば(筆者はそう思わないが)、マーケットメカニズムを歪めるものだ。価格の上昇はその財の消費を削減するか、可能であれば増産するかの行動を促すものだ。それを歪めては、将来的にますます高いエネルギーに依存するしかないことになる。

 食糧生産については、減反などの生産抑制を止めるチャンスだ。石油や天然ガスでは日本国内で生産できないが、風力や太陽光のような自然エネルギーとのコストの差が縮むのだから、自然エネルギーを拡大するチャンスである。また、そもそもエネルギー多消費型の経済を省エネルギー型の経済に転換するチャンスである。

 1970年代前半の石油ショック時に、多くの先進国は市場に介入し、エネルギー価格を政策的に引き下げる政策を行った。ところが日本は、エネルギー価格を素直にコストに反映させた。

 その結果、エネルギー多消費型の産業では省エネが進むか、その規模が縮小し、自動車や電機などのエネルギーをそれほど使わない産業の比重が拡大した。これらの産業の相対的な競争力が高まり、日本の小型車は省エネ型の自動車として米国市場に受け入れられた。


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