どのように助けるのか
所得の低い人々を助けるなら、直接、現金を渡すという方法がある(もちろん、実際は銀行振り込みになる)。なぜおコメ券なのだろうか。
「東京おこめクーポン事業」とは、物価高の影響を受けやすい低所得世帯(2022年9月時点の年間所得で住民税非課税世帯およびその後年間収入見込み額が住民税非課税世帯相当となった家計急変世帯)に区市町村ごとにクーポン券を支給するものだ。
受け取ったクーポン券は、同封のリーフレットに記載されている食品パッケージの中から選んで選択すると、2回または3回に分けて送られてくる。食品の配送は3月下旬以降、9月までに順次配送されるというものだ。選べる食料は、おコメ、野菜、飲料などだ。
これにかける予算は296億円。クーポン券は1万円相当とされ、対象は約174万世帯となっており、発行するおコメ券は約174億円となる。事務費や輸送料で約100億円を使うということである。
おコメ券で市区町村が現物を配送するという方法ではなくて、おコメや野菜など食品の購入に使えるクーポンを渡すという手段もある。これでも事務費は数%以下であろう。実際、米国では低所得者向けにフード・スタンプという食品の購入に使える金券を配布している。
何が食品かという問題が生じるかもしれないが、たまたま食料品は8%の軽減税率がある。8%のものだけを東京型フード・スタンプで購入できるようにすれば良い。外食と酒類は除かれるが、多くの人はこれを良しとするだろう。
なぜ食糧の現物支給なのだろうか。すでに政府は、コロナ対策として、全世帯に10万円を配っているし、本年度にも住民税非課税世帯向けに3万円、子育て世帯に対して子供一人当たり5万円を配るという(「物価高支援 累計15兆円」日本経済新聞、2023年3月23日)。現金支給は悪くない政策だと国も認めている。
現金を配ればパチンコに使うという人は多いが、食料品を配っても、それで節約できたお金でパチンコをしたり酒を飲んだりできる。現金を配っても貯蓄して消費に回らないという人もいるが、配られた食品で節約したお金を貯蓄できるのは同じである。現物支給は宅配業者の仕事を増やして、ただでさえ不足の運輸業者の人手不足を悪化させる。