図1は、1970年代の産業構造(製造業全体に占める各産業のシェア)の推移を示したものである。図に見るように、石油・石炭製品、金属製品、窯業・土石などエネルギー多消費型の産業が縮小し、電器・精密機械のシェアが上昇した。
ここで輸送機械のシェアがそれほど伸びていないのは、自動車産業の拡大と造船業の縮小が同時に起きていたからである。鉄鋼や化学はエネルギー多消費型の産業であるが、他の国の同じ産業よりも省エネ的であればシェアを維持できる。
要するに、エネルギー価格はそのまま市場に任せておいた方が望ましい。もちろん、高価なエネルギーや食糧で打撃を受ける人々、特に所得の低い人々を助けることは必要だ。
その場合、エネルギーや食糧への補助を行うより、打撃を受ける人々への直接の所得補助が望ましい。この方法は、必要な経済構造の変化を妨げることがないからだ。
誰を助けるのか
エネルギー価格や食品価格の上昇によって打撃を受けるのは所得の低い人々である。では、どうやって、その人々を識別するのか。
所得の低い人は住民税非課税世帯か否かで識別されている。世帯の構成員、自治体によっても多少異なるが、会社員、専業主婦、子ども2人世帯では年収255万円以下が住民税非課税世帯となる。
図2は、全世帯のうちの住民税非課税世帯の比率を示したものである。図から明らかなように、住民税非課税世帯は、年齢が上がるほど比率が高くなる。
全世帯5142万世帯に対し、住民税非課税世帯は1218万世帯で、23.7%だが、70代では33.1%、80歳以上では44.1%となる。同じ収入でも、年金受給者は控除が大きいので住民税非課税になりやすい。つまり、住民税非課税世帯に配るということは、高齢者に配るということでもある。これは高齢者の政治力に対応したものかもしれない。
次の課題は、これらの人々にどのように援助するかである。