縮小する国内市場
今年4月に国立社会保障・人口問題研究所が発表した2070年の日本の人口予測は、中位で8700万人。今から3割減少する。もっとも低いケースでは7800万人。4割近く減少する。
2100年の長期予測も発表されているが、中位予測で約6300万人。今の人口の半分だ。もっとも少ない場合には5000万人を切る。今の約4割まで人口が減少する。
国内総生産(GDP)の半分以上を占める消費支出の落ち込みは経済に大きな影響を与えるが、高齢化も進むので、人口減少のスピードよりも市場規模の縮小が早く進む可能性が高い。高齢者世帯は、働き盛りの世帯よりもお金を使わないからだ。
22年度の消費支出額を比較すると、高齢者世帯の支出は、勤労者世帯の約4分の3だ。勤労者世帯の月間平均支出額27万5500円に対し、無職世帯は20万2900円。二人以上世帯では、勤労者世帯約32万円に対し無職世帯約24万円だ。無職世帯の世帯主の平均年齢は74.9歳なので、高齢者世帯と考えてよいだろう。
高齢者(65歳以上)と生産年齢人口(15歳から64歳)の比率が世帯比率に相当するとおおまかに考えると、70年には生産年齢人口が今の6割になることから、消費市場の縮小は人口減少を上回ることが考えられる(年齢別人口の推移予測は図-1)。
市場縮小が予想される中で国内市場を対象に大きな投資、あるいは増産する企業はないし、企業の収益と生産性が上昇することもないだろう。
持続的賃上げには、生産性、一人当たり付加価値額の上昇が必要だ。そうでなければ、企業は継続して賃上げはできない。しかし、国内市場が対象では生産性向上は難しい。
では、海外市場はどうだろうか。国内市場が成長しなくても、輸出が伸びれば一人当たりの付加価値額が増え、賃上げに結び付く可能性がある。
伸びない貿易の中で重要な産業
「貿易立国日本」と言われていたのは、既に過去のものになりつつある。10年に7700億ドルあった日本の輸出額は、22年は7460億ドルと全く伸びていない。世界全体の輸出額は、10年の15兆2310億ドルから22年24兆4590億ドルに伸びている。
日本の世界の輸出に占めるシェアは、この間5.1%から3.1%に低下した。同時期、ドイツ、米国、中国は、それぞれ輸出額を1.3倍、1.6倍、2.3倍に拡大している。最近の4カ国の輸出額の推移は図-2だ。