先日講演を行った際に、聴衆の方から「シェールガスは天然ガスと違うものですか?」と質問がありました。
石油と天然ガスは、岩石の中に浸み込んでいた成分が溶け出し形成された地層から採掘されます(「【解説】石炭、石油、天然ガス 化石燃料は尽きるのか? エネルギー基礎知識③」) 。
しかし、シェール(頁岩)の中に浸み込んだ天然ガス、石油は浸みだしてこず、閉じ込められたままです。このシェールの中の天然ガス、石油を商業的に大規模に取り出すことに2000年代前半に米国企業が成功します。
シェールから取り出した天然ガスをシェールガスと呼びます。石油はシェールオイルと呼ばれますが、シェール以外の地層中に浸み込んだ天然ガス、石油と合わせタイトガス、タイトオイルと呼ばれることもあります。固く閉じ込められたガス、石油です。
天然ガス、石油鉱床から採掘される在来型ガス、石油との比較で、シェールガス、オイルは非在来型ガス、石油と呼ばれます。
シェールガスとオイルの商業生産に成功した米国は、天然ガスと原油生産量世界一になり、天然ガス、原油輸入国から一転輸出国になりました。天然ガス価格も大きく下落しました。
シェール革命と呼ばれる現象は、米国だけではなく世界のエネルギー需給環境に大きな影響を与えました。脱炭素にも影響を与えるとの指摘もあります。
一方、シェールガスの埋蔵量世界一は米国ではなく中国です。アルゼンチン、アルジェリアが続き、米国は世界4位です。それにもかかわらず、米国以外ではシェールガスはあまり生産されていません。それには理由があります。
シェール革命の始まり
天然ガスと石油が浸透しているシェール層から採掘を行う試みとして、1947年にカンサス州において水を主体とした液体を高圧で地層に投入し亀裂を入れるフラッキング(水圧破砕法)が実行されました。しかし、フラッキングのコストは高く、採掘される量に見合わなかったため大きくは広まりませんでした。
シェール革命を先導しシェールガス開発の父と呼ばれるジョージ・ミッチェルが創業したミッチェルエナジーは、エネルギー省の援助も受け、諦めることなくフラッキング法の改善を続け、80年代にテキサス州のバーネットシェール層から経済性のあるレベルでの生産に成功しました。
2002年にミッチェルエナジーを買収したデボンエナジーは、70年代に開発されていた水平掘削法とフラッキングを組み合わせ採掘する方法を2004年に開発します(図-1)。この方法によりシェールガスとオイルの産出量は飛躍的に増大しました。