2024年12月22日(日)

World Energy Watch

2023年7月28日

 環境、気候変動問題に係わる活動家の中には、気候変動問題を世間に訴えるためであれば何をやっても許されると考える人たちがいる。

 美術館に展示されている絵画にスープをかける行動は日本でも大きく報道されたが、他にも活動家が起こした多くの事件がある。今年7月に海外であった活動家の違法行為は以下だ。

 ウインブルドンのテニスコートへ乱入し、紙吹雪とジグソーパズルのピースをぶちまけた。ゴルフの全英オープン中にホールに侵入した。ミュンヘンの道路で座り込み、接着剤で体を道路に固着させた。ハンブルグとデュッセルドルフ空港に侵入し、滑走路近くに体を接着し航空機の発着を妨害した。

(AlexeyVS/Picsfive/Andrey_Kuzmin/3d_kot/gettyimages)

 いずれの違法行為も迷惑をかけることになり、多くの人が眉をひそめている。気候変動の活動を支持する人も離れていくと英国では報道されている。

 活動家は気候変動問題に注目を集めるための行動と主張しているが、その結果回りまわって石炭価格が上昇し、石炭に依存する途上国の貧困問題を悪化させることに気がついているのだろうか。石炭火力が全供給量の4分の1を供給する日本の電気料金まで上昇するのも大きな迷惑だ。

 加えて、脱石炭を主張している活動家は結果として脱炭素を妨害している。活動家の行為が報道され鉱業は地球環境に悪いとのイメージが広がっている。

 エネルギー資源に限らず鉱業が盛んな米国、カナダ、豪州、南アフリカでは鉱山学、地質学を専攻する学生が大きく減少し、脱炭素に必要な資源を採掘する技術者が不足し始めている。活動家のおかげで再生可能エネルギー(再エネ)設備導入が進まず脱炭素も遅れる。

ターゲットはスポーツイベントから名画まで

 気候変動問題への取組の遅れを批判する環境団体の中から過激に行動するグループが登場し注目され始めたのは、4、5年前だ。

 フランスの環境団体「最後の革新」のメンバーが、昨年7月にテニスの全仏オープンの試合中にコートに乱入しネットに体をくくりつけた。自転車の世界大会ツール・ド・フランスのコースに何度も立ち入り競技を妨害した。

 「最後の革新」は、フランスのすべての建物を省エネのため40年までに改装するよう政府に要求している。全仏オープンでの妨害では、チェーン状のカギを首の周りに巻きネットにくくり付けたが、英国の環境団体「ジャスト・ストップ・オイル」が昨年3月の英国プレミアリーグのサッカーの試合の妨害に用いた方法の模倣だ。ゴールポストと自分の首をチェーン状のカギで結びつけ試合を中断させた。

 ジャスト・ストップ・オイルは、今年も妨害活動を継続中だ。テニスのウインブルドン大会で7月5日にコートに乱入した。団体の4人が7月21日、ゴルフの全英オープンの17番ホールのグリーン横でオレンジ色の粉をまいた。6月28日にはロンドンで行われた英国対豪州のクリケットの試合に2人が乱入し、選手につまみ出された。


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