ジャスト・ストップ・オイルはメディアに取り上げられるイベントであれば、F1のグランプリからビリヤードの世界選手権まで妨害活動を行っている。世界中で大きく報道されたのは、昨年11月にジャスト・ストップ・オイルのTシャツを着た2人が、ロンドンのナショナル・ギャラリーに展示されているゴッホの「ひまわり」にトマトスープをかけた事件だ。
過激な環境団体はゴッホ以外の名画もターゲットにし、豪州・メルボルンではピカソ、ドイツ・ポツダムではモネなど世界の名画にスープとかマッシュポテトが投げつけられた。絵画はガラスで保護されていたので大きな損傷をいずれも受けなかったが、貴重な額縁が破損したケースがあった。ルーブルなど世界の約100の美術館長が抗議声明を出す事態になったが、活動家は全く懲りていないようで、今度は世界中でタイヤの空気を抜いている。
活動家はSUVを許さない
米国の自動車市場では、SUVとピックアップトラックの販売シェアが伸びている。15年にSUVなどのシェアが初めて乗用車を上回ったが、今年前半には乗用車が2割強まで落ち、SUVなどが8割近くまで増えた(図-1)。
販売上位10車種の中に乗用車はトヨタ・カムリ(8位)だけ。残りは全てSUVとピックアップトラックだ。トヨタ、ホンダ、日産のSUVも1車種ずつ上位10車にランクインしている。
活動家は世界中で販売が伸びているSUV車を目の敵にしている。大型で頑丈なので歩行者には危険で、おまけに燃料消費が大きいという理由だ。活動家はタイヤの空気を抜く「タイヤ絶滅」を組織し、世界18カ国で1万5000人のメンバーがSUVのタイヤの空気を抜く活動をしている。
18カ国の大半は英仏独などの欧州諸国だが、米国、カナダ、ニュージーランドにも組織があるとされる。日本に組織がないのは幸いだ。昨年11月には、パリ、ニューヨーク、ロンドンなど8カ国19都市で900台のSUVのタイヤから空気を抜いたと発表している。
今も毎月多くの都市で活動を行っており、6月と7月は、ドイツ、英国、ポルトガル、デンマークの都市で被害が出ている。団体のホームページには、タイヤからの空気の抜き方まで掲載されている。
今年4月に米国・ボストンの高級住宅街で43台のSUVが被害に遭った際には、メモが残されていた。その要旨は次だ。
「気候変動、大気汚染、安全問題を引き起こす、都市近郊では不必要な大型車なので迷惑だ。清潔で安全な通りの街に住みたいとお願いしてきたが、うまく行かなった。今行動すべきだ。参加しよう」
被害に遭った人は怒り心頭だ。「温暖化に関する主張は理解できるが、病院に行かなければいけない人も、病院などに勤めている人もいることを考えるべきだ」とのコメントも紹介されている。
環境団体は、温暖化により途上国、なかでも最貧国の人が被害に遭うと主張しているが、環境団体がエネルギー価格を上昇させ被害を拡大していることは忘れているようだ。