気候変動問題、環境団体の行動は鉱業全般に影響を与え、鉱山技師などのエンジニアが不足し始めている。脱炭素には、リチウム、コバルト、銅など必要な資源が多くあるが、採掘できるのだろうか。
脱炭素の邪魔をする環境団体
英国ロンドン大学バークベック校は、昨年9月に学内の環境団体「人たちと惑星」の要望を受け、大学は石油、天然ガス、あるいは鉱山会社へ就職のための学生の紹介活動を行わないと発表した。オックスフォードなどの大学でも、鉱山会社が開催する就職関連イベントが学生などの妨害を受け開催できなくなってきている。
鉱業は地球を壊すとのイメージが強くなり、資源国において鉱山学を専攻する学生数が大きく減少している。専攻への入学者数が、米国では13年から19年にかけ50%、豪州では12年から20年に80%減少した。カナダ、南アフリカなどの資源国でも減少している。
米アリゾナ大学が20年秋に工学部の入学者を対象に関心があるコースを5段階で評価させたところ、最高は航空宇宙の3.5。鉱山学・地質は15コース中最低の2.0となった。
脱炭素のためには、風力、太陽光発電設備、電気自動車、蓄電池などが必要になるが、その原材料の多くは中国が供給している。主要国は、脱中国のため重要鉱物を同盟国とともに生産する方針を示しているが、エンジニアがいなければ生産できない。
今年4月に送電を開始した米ボーグル原発3号機の工事に際し、米国では約30年間原発の新設が途絶えたため、エンジニアがおらず中国からエンジニアを招聘せざるを得なかった。脱中国が課題の重要原材料の生産時に中国のエンジニアに頼ることはできない。
ニュースが過激な環境団体の行動を取り上げる度に、学生は鉱業に関心を失い、脱炭素を支える原材料の生産が遠のく。気候変動への関心を呼び起こす過激な行動は、世間に迷惑をかける上に思わぬ効果を生み出し、気候変動問題の解決を遅らせることにもなっている。あまりに馬鹿げていないだろうか。