途上国は燃料が買えない
欧州発のエネルギー危機により天然ガス価格が急上昇した結果、西アジアの国は液化天然ガスの購入ができず、計画停電の実施を迫られた。世界の石炭の発電量は天然ガスよりも大きく、世界の発電量の36%は石炭火力が担っている(図-2)。依然石炭に依存する途上国も多い。
石炭輸出国は寡占化が進んでおり、インドネシア、豪州、ロシアが3大輸出国だ。日本も燃料用一般炭の7割以上を豪州に依存している(図-3が2023年1月から5月の輸入実績を示している)。
その豪州の石炭生産量が減少している。石炭価格が史上最高値を記録した22年の生産数量は、前年比マイナス4%。19年からはマイナス12%だ(図-4)。最大の石炭港湾ニューキャッスルからの22年の輸出数量は21年から13%減の1億3600万トンだった。
生産減の理由の一つは、悪天候だが、労働者不足も大きな要因として指摘されている。22年前期、豪州の大手石炭会社の生産コストは前年比平均22%増と報告されているが、コストアップ要因の一つは人手不足だ。
豪州政府が発表している労働者不足の上位20職種の中に、鉱山技師、電気工、機械工が含まれており、統計局によると鉱山では1700人が不足している。
炭鉱で働く人の高齢化も進んでいるとされるが、脱炭素に加え環境団体による石炭への攻撃もあり、働く人を見つけるのも難しくなっている。コストアップが石炭価格上昇を引き起こすことになり、石炭火力に依存する途上国のみならず、日本の電気料金にも影響が及ぶ。