2024年5月20日(月)

一人暮らし、フリーランス 認知症「2025問題」に向き合う

2024年1月5日

具体的なリスク回避行動は?

 では、ハンドブックの中から認知症リスクの低減につながる情報を探していこう。まずチェックしておきたいのが、「認知症をきたす主な原因疾患」のページだ。「原因」と「疾患名」が書いてあり、疾患によっては、「治る認知症」と「治らない認知症」があるとわかる。

「原因疾患を確定しないで症状を放置していると、治る認知症も治らなくなってしまうことがあります。おかしいと感じたら、早めに医療機関を受診して、認知症か否か、認知症だとするとその原因疾患が何であるかを確定するのが大事です」

「あたまとからだを元気にする MCIハンドブック」より

 さらにもくじをチェックすると、「生活習慣病・病気」「運動」「食事・栄養」「社会参加」などのタイトルが付けられたページがあり、3本柱について考える前に、どんな生活習慣病や病気に注意すべきかを知るのが大事だと想像できる。

 具体的に見ていくと、「生活習慣病・病気」に関する項目では、糖尿病や脳卒中、脂質異常症などの他、肥満や高血圧に言及しているのだが、病気にならないにようにするのが流石に難しいとしても、肥満や血圧など自分でコントロールできるものなら、意識することはできそうだと思える。

 「糖尿病患者では、アルツハイマー型認知症のリスクが2・1倍になるとわかっています。また、高血圧の方は血管性認知症になりやすいですし、40歳から64歳までの中年期に肥満である人ほど認知症になりやすいことが多くの研究でわかっています」

 これらを考えると、中年期ではメタボ対策が認知症対策のメインテーマになるかもしれない。

低栄養やコレステロール値も関係

「一方、65歳以上からは、痩せ過ぎに注意が必要です。MCIの人は、一般の人よりも低栄養状態にある事が多いとわかっています。また、認知症の人では診断される10年前から体重減少が始まっている事がしばしばあり、体重減少から認知症とわかるケースも少なくありません。低栄養に陥らないためにも、65歳を過ぎたら、体重を減らさないように気をつけましょう」

 ちなみにBMI(Body Mass Index)という体格を表す世界共通の数値がある。算出方法は「体重(キログラム)÷身長(メートル)÷身長(メートル)」で、18・5~28未満が普通体重とされており、18,5以下だと低体重、25以上は肥満とされる。

「若い人では、BMIは22が最も長生きすると言われています。一方、高齢期では少しふくよかくらいの方が健康寿命をキープしやすいと言えます」

 6万人の高齢者を対象とした検査では、2年間でBMIが5%以上減少した人は、5%以内の人に比べて認知症になりやすいことが報告されていると言う。

「65歳以上になったら、BMIが30にならなければいいくらいのおおらかな気持ちで、体重を減らすことよりもしっかり食べることを重視しましょう」

 また脂質異常症の脂質とは、血液中に含まれるコレステロールや中性脂肪の事。中年期に総コレステロール値が高いと認知症発症の危険性が高くなると報告されているという。コレステロール値を下げる薬物治療によって認知症の危険性が下がるという報告もあるので、気に留めておくといいだろう。

 次回は、認知症のリスク低減策に欠かせない「運動・食事・社会参加」の方法をより具体的に見ていく。(続く)

   
▲「Wedge ONLINE」の新着記事などをお届けしています。


新着記事

»もっと見る