2024年5月11日(土)

World Energy Watch

2024年1月19日

 米国などからの液化天然ガス(LNG)、原油の調達も進み、化石燃料価格は22年の大幅上昇期から落ち着きを取り戻している(図-3)。

 ただし、石炭の価格はロシア侵略前のレベルまで下がりきっていない。脱石炭の動きを受け輸出国豪州において労働者不足が顕著になっていること、また港湾、鉄道のインフラの能力にも限度があることから出荷増は簡単ではないからだろう。

 天然ガス価格も、フーシ派による攻撃のリスクを避けるためスエズ運河に代え喜望峰回りを強いられるLNG船が登場していることから、上昇する可能性が高い。石炭、LNGは、それぞれ日本の電力供給の31%と34%を占める燃料であり、価格動向が電気料金に影響を与える。

ロシア産原油を買いたたく中印

 ロシアのウクライナ侵略前の2021年のロシア産原油の輸出相手国は、欧州諸国が約50%を占め、中国が約30%で続いていた(図-4)。

 欧米諸国のロシア産原油の輸入禁止(EUでは東欧諸国向けのパイプラインによるロシア産原油は対象外)により、ロシア産原油の輸出相手国は大きく変わった。

 昨年末に地元のテレビに出演したロシアのノバク副首相は、石油輸出の40%から45%が中国向け、約40%がウクライナ侵略前にはほぼ輸出がなかったインド向けになったと明かした。

 23年に中国はロシアに石油代金として約600億ユーロ(約9.6兆円)、インドは400億ユーロ(6.4兆円)、トルコは200億ユーロ(3.2兆円)を支払っている(図-5)。

 中国、インドなどがロシアから大きく購入量を増やしたのは、欧米市場を失ったロシアから安く原油を購入できたからだ。

 ロシア産原油はウクライナ侵略以降大きな値引きを強いられた。図-6に、侵略前の22年1月から禁輸になる22年12月までの米国産(WTI)とリビア産(Miscellaneous)、ロシア産(ウラル)原油のEUの月間平均輸入価格を示した。

 侵攻前まで、3原油はほぼ同じ価格で取引されていたが、侵攻後ロシア産原油の値引き額は最大バレル当たり30ドルを超えた。

 中印もこの価格レベルでロシア産原油を購入した。中印に限らず、産油国のサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、リビアまでロシア産原油を購入した。値差を利用し、儲けられるからだ。


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