2024年5月16日(木)

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2024年2月16日

せたがや元気体操リーダー

元気リーダーの池田潔さん

 続いては、1月のななつのこの「健康体操」で体操を指導していた池田潔さん(66歳)。池田さんは、世田谷いきいき体操を教えていたが、保健センター(→注)の運動指導員ではなくて、保健センターが育成した「せたがや元気体操リーダー(以下、元気リーダー)」だとか。

 世田谷区では、あんしんすこやかセンターなどから依頼を受けると、世田谷いきいき体操を行う団体などに、保健センターから運動指導員や元気リーダーを派遣している。

 元気リーダーは、地域の体操リーダーとして活躍するためのボランティア精神と体操指導法を学んだ有償のボランティアで、平成17年から世田谷区、保健センター、NPO法人健康フォーラムけやき21(以下、けやき21)で養成を開始。令和5年度までに11期開催し、現在、70名ほどが登録されているという。

せたがや元気体操リーダー|公益財団法人世田谷区保健センター (setagayaku-hokencenter.or.jp)

せたがや元気体操リーダーとは | NPO法人健康フォーラムけやき21 (kenkoukeyaki21.com)

 注)「公益財団法人世田谷区保健センター(保健センター)」は、地域の健康づくりの自主活動グループの支援に実績のある団体で、2015年(平成27年度)に世田谷区から依頼を受けて、「世田谷いきいき体操」を考案・作成した。

「元気リーダーは、元々の運動経験の有無などは関係なく、『区民が区民を守る』ことをモットーに、地域の健康やご自身の健康を支えあうことのできる方を選んで養成しています」とは、保健センタ―の高野さん。

せたがやいきいき体操を指導する池田さん

 講座は隔年で開催し、3日間の講義や実技講習とその後の研修や実施体験などで養成する。現在のリーダーは40代~80代で、中心は60代。そのうち、女性が9割で、主婦の方が多いとか。

 その中で、池田さんが元気リーダーになったのは、どういう理由からなのだろうか。

「私が元気リーダーになったのは、2年前の令和4年です。両親がこの体操教室に参加していて、元気リーダーの存在を知っていた中で、56歳の時に脳梗塞を患いまして、人生の最終章をこの活動で送りたいという強い思いが生まれました」(池田さん、以下同)

 病に倒れた池田さんは、「左手が動かない、左足が動かないという現実」や、「ICU室の中での現実」を自分の今までの生活姿勢や態度が招いた「必然性のある現実」だと受け止めた。そして「これからどう生きていくか」「何を最優先させるか」と考えた結果、優先順位の一番が「元気で健康体で生きること」となり、「その為に何をするか」と思いを巡らせた末に、元気リーダーになることを決意した。

「定年前が畑違いの仕事でしたので、運動指導の資格も知識もありません。それ故、人様から対価をいただくという考えはありませんでした。もちろん、お金は欲しいです。が、89歳の母親の面倒を看なければならないので、時間的に制約のある有償の仕事の優先順位は下です。給料や対価よりも、自ら動くこと、考えること、人とおしゃべりすること、つまり、人様と接する場を元気リーダーの活動に提供してもらえていると考えています。そして、実際、この活動を私はとても気に入っているんです。巷で言われている高齢者問題の一つ、孤独がこの活動で解決できていますし、人間関係のトラブルもない。この活動で出会う方々は人間性豊かな人たちばかりなので、派遣先に向かう時には、毎回メンバーの顔が思い出されて、会うことがとても楽しみになります」

ななつのこへの訪問は、この時が初回

 派遣される先の団体にいる方々の体力に合わせて、事前に「ああしよう、これはどうか」とメニューを考えたり、地図を読み、車の少ない道を探したり、どう行けば最短距離になるかと考えるのも喜びの一つとか。

 なお、元気リーダーには毎回2,000円が支払われているが、池田さんはそのお金で先日、派遣先に向かうための自転車を購入したという。「雨の時は電車や車を使うので、その補填になればよい程度に考えています」。

 現在は週に一度、世田谷区内の各地に派遣されているが、「病気で入院するまで、もしくは認知機能がダメになるまで、この活動を続けたいと考えています」と池田さん。

 世田谷区で生まれた池田さんは、元気リーダーになってまた新たに信頼のおける地元仲間たちとの関係を築き始めている。(続く)

   
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