2024年5月16日(木)

モノ語り。

2024年3月2日

パプアニューギニア産のコーヒー豆の麻袋(写真・編集部)

 そうした経験やつながりによって松葉さんは「エルドラド(黄金郷)」にたどり着きます。

 2018年にパプアニューギニアを訪れた時のことです。

 「国有林の奥深くで80年前に部族がコーヒー栽培をしていたらしい」と聞いて、山賊対策として軍人に護衛してもらいながら山奥に分け入ったそうです。

 「片道8時間かけて到着すると、コーヒーの木のジャングルが本当にあったんです。調べると品種交配される前のアラビカ原種(ティピカ亜種、ブルーマウンテン同種)でした。通常、オーガニック栽培は土壌改良に何十年もかかるのですが、ここは農薬の無かった80年前から自生できる環境が自然で成り立っているため、正真正銘のオーガニックでした」

ビジネスは大きさでなく持続性

 パプアニューギニア・日本両政府の力も借り、約5年かけて日本に持ってくることができました。まさに「金脈」とも言える豆ですが、松葉さんは値段を引き上げたり、大量に収穫したりすることはしません。

 「長く続けるために一人勝ちしない仕組みを作りました。例えば、ブランディングをして価格を上げれば、もっと収穫しようとなります。ですが同時に、自然とコーヒー豆や木葉が落ち土の養分になるサイクルや動植物のバランスが崩れます」

イフニコーヒー左から「ドリップバッグ」「水出し」「豆」。オンラインショップからも購入可能(撮影・鈴木優太)

 ビジネスを大きくするのではなく、小さくても持続性を大事にしたのです。イフニコーヒーのパッケージにはこう書いてあります。

 「いつも新鮮な一杯を。生活のコーヒーをお楽しみください」

 私にとってもそうですが、多くの人にとってコーヒーは毎日の生活に欠かせないものです。だからこそ、持続性が大事なのです。

著者(左)と松葉さん
イフニ ロースティング アンド コー/IFNi ROASTING & CO.
静岡県静岡市葵区水道町125 054-255-0122

   
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Wedge 2024年3月号より
ジェンダー平等と多様性で男性優位の社会を変えよう
ジェンダー平等と多様性で男性優位の社会を変えよう

「育児休暇や時短勤務を活用して子育てをするのは『女性』の役目」「残業も厭わず働き、成果を出す『女性』は立派だ」─。働く女性が珍しい存在ではなくなった昨今でも、こうした固定観念を持つ人は多いのではないか。 今や女性の就業者数は3000万人を上回り、男性の就業者数との差は縮小傾向にある。こうした中、経済界を中心に、多くの組織が「女性活躍」や「多様性」の重視を声高に訴え始めている。

内閣府の世論調査(2022年)では、約79%が「男性の方が優遇されている」と回答したほか、民間企業における管理職相当の女性の割合は、課長級で約14%、部長級では8%まで下がる。また、正社員の賃金はピーク時で月額約12万円の開きがある。政界でも、国会議員に占める女性の割合は衆参両院で16%(23年秋時点)と国際的に見ても極めて低い。

女性たちの声に耳を傾けると、その多くから「日常生活や職場でアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み、偏見)を感じることがある」という声があがり、男性優位な社会での生きづらさを吐露した。 

3月8日は女性の生き方を考える「国際女性デー」を前に、歴史を踏まえた上での日本の現在地を見つめるとともに、多様性・多元性のある社会の実現には何が必要なのかを考えたい。 


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