2024年4月29日(月)

モノ語り。

2024年3月2日

 静岡と言えば「お茶」と思う方が多いはずですが、私にとってはコーヒーです。

(撮影・鈴木優太)

 10年前、初めて自分のカフェをオープンさせることになったときのことです。真っ先に訪ねたのは、静岡でコーヒー豆の焙煎・卸し・販売をする、イフニコーヒー(2001年創業)の松葉正和さん(50歳)です。

 コーヒーは素材(豆)以上の味を出すことは難しいと言われていますが、松葉さんは焙煎技術によってそのハードルを乗り越えることができるのです。知る人ぞ知る松葉さんですが、黒子に徹しています。

 「あの人に出会ったときに、そういえばコーヒーを飲んだなと、記憶の片隅に残るような仕事がしたいですね」

 そう、松葉さんにとってコーヒーは脇役であって主役は人なのです。

 「どんな味が好きかは、個人が決めることです。スペシャリティ(品質流通管理が徹底されたコーヒー豆)だから大事に飲むということではなく、人それぞれに好みや楽しみがあっていいんです。今でこそ、味を楽しむにはブラックで飲むのが当たり前ですが、豆の品質が良くなかった頃は、乳汁やハーブなどでアレンジすることが普通でした」

 コーヒーの楽しみ方は自由なのです。私にとってコーヒーとは、1日の始まりだったり、リラックスするときだったり、気分を切り替えたりする時の「スイッチ」になっています。

 焙煎技術がすごいと言いましたが、松葉さんの真骨頂は「調達」にあります。松葉さんは、19歳の時にエジプトでコーヒーに目覚めました。そこから探究心は止まらず、焙煎所やコーヒーショップ、農園などに滞在しながらブラジルやEU(欧州連合)、インドネシア、タイなどを渡り歩いたそうです。


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