イスラエルの戦時内閣は15日、前日に続いて閣議を開き、イランによる前例のないドローン・ミサイル攻撃への対応について協議した。なんらかの決定に至ったかどうか、イスラエルは公表していない。
イスラエルの同盟各国は、イランの行動を強く非難しつつも、中東地域での紛争拡大を避けるためイスラエルに対して自制を促している。
イランの国連代表部は攻撃から間もなく、「この問題は決着したとみなすことができる」とソーシャルメディアに投稿したが、イスラエル国防軍（IDF）のヘルジ・ハレヴィ参謀総長は、イランはイスラエル攻撃に対する報復を免れられないと述べた。
「我々は先を見据えて、自分たちの対応を検討している。（イランが）イスラエル領土へ実に多数のミサイル、巡航ミサイル、UAV（無人航空機）を発射したことに、（自分たちは）対応することになる」と、ハレヴィ参謀総長は述べた。報復措置の詳細や時期については明らかにしなかった。
ハレヴィ中将は、イスラエル南部のネヴァティム空軍基地で演説した。同基地は14日未明のイランによる攻撃で被害を受けたが、「まだ機能している」とイスラエルは説明している。
米中央情報局（CIA）元長官のデイヴィッド・ペトレアス退役陸軍大将はBBCラジオ4の番組「ワールド・トゥナイト」で、イスラエルがイランに報復することで世界経済の健全性が危険にさらされることを、米政府は望んでいないと語った。
かつてイラク多国籍軍やアフガニスタンでの国際治安支援部隊の司令官などを歴任したペトレアス氏は、イランの攻撃は「非常に大きな問題」で、西側諸国はこれがイスラエルにとってどれほど重大なことかを理解しなくてはならないとした。
「次に何をすべきかについてさまざまな見解があるのが、今の課題だ。何らかの理由でブレント原油価格が急騰したり、あるいは湾岸地域での航行の自由に何か問題が生じたりしたら、どうするのか。そもそも、イランが先日、石油タンカーを拿捕（だほ）したことをめぐる懸念もある」
「事態悪化をこれ以上加速」させずにイスラエルの抑止力をどう示すか、その方法についてイスラエル政府内で議論されていると、ペトレイアス氏は述べた。
また、緊迫の度合いを悪化させずに対応を可能にする、非対称的な選択肢がイスラエルにはいくつかあると、同氏は付け加えた。
イラン政府は14日未明の攻撃について、シリア・ダマスカスのイラン公館が4月1日に攻撃され、上級司令官らが死亡したことへの報復だとしている。
IDFはイスラエルに向けて300以上のドローン（無人機）やミサイルが発射されたが、アメリカやイギリス、フランスなどの支援を受けて、そのほとんどを攻撃目標に到達する前に撃墜したと発表した。死者は報告されておらず、イスラエルは被害は限定的だったとしている。
国際社会は自制促す
アメリカのジョー・バイデン大統領はイランの攻撃を受け、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と電話会談し、「イスラエルの安全保障に対するアメリカの鉄壁のコミットメント」を再確認した。
しかし、ホワイトハウスの高官によると、アメリカはイスラエルのイランに対するいかなる報復攻撃にも参加するつもりはないと、イスラエルに伝えたという。
バイデン氏は15日、「我々は人質を帰還させ、すでに拡大している紛争がこれ以上広がらないよう、停戦実現に向けて取り組んでいる」と述べた。
イギリスのリシ・スーナク首相は15日に議会で、イランとイスラエルの緊張関係に言及し、「すべての側」に「自制を示す」よう呼びかけた。また、連帯を表明し、「さらなるエスカレーション」を防ぐ方法を協議するため、ネタニヤフ氏と話すつもりだと付け加えた。
イスラエル占領地で暴力行為が急増
こうした中、イスラエルが占領するパレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区では、10代の少年が殺害された事件を受け、暴力行為が急増している。
少年は12日、ヨルダン川西岸地区ラマラ近郊のイスラエル人入植者の前哨基地から羊の群れを放牧に連れ出したまま行方不明になった。IDFはその後、少年の遺体を発見した。
イスラエル政府は、少年が「テロ攻撃」の犠牲になったと発表した。
アメリカはパレスチナ人の若者2人を殺害するなどの、イスラエル人入植者による報復暴力を非難している。
イスラエルは15日、ヨルダン川西岸地区ナブルス近郊でさらに2人のパレスチナ人が殺害されたことについて調査すると発表した。この事件は、イスラエル人入植者によるものとみられている。
（英語記事 Israeli war cabinet meets to discuss response to Iranian attack）
