2024年5月4日(土)

BBC News

2024年4月23日

イスラエル国防軍(IDF)は22日、軍参謀本部諜報局のアーロン・ハリヴァ局長が、イスラム組織ハマスによる昨年10月のイスラエル奇襲を阻止できなかったとして引責辞任すると発表した。

IDFによると、ハリヴァ氏は後任が決まり次第、諜報局長から退くという。

ハリヴァ氏は書簡の中で、自身が率いる諜報局が「任されていた任務を果たせなかった」ことを認めた。

イスラエル史上最悪の犠牲者を出したハマスの奇襲をめぐり、軍高官が退くのは初めて。

数百人規模のハマス武装集団は昨年10月7日、パレスチナ自治区ガザ地区との境界フェンスを突破してイスラエル側に侵入し、複数のコミュニティーや軍事基地、野外音楽フェスティバルの会場を襲った。IDFとイスラエル情報当局は襲撃が起こりうるとの警告を何度も見逃したり無視したりした。

イスラエル側の集計によると、ハマスの襲撃でイスラエル人と外国人の計約1200人が殺害され、253人が人質としてガザ地区に連行された。死者のほとんどは民間人だった。

イスラエルはハマス壊滅と人質解放を目指して報復攻撃を実施。ガザ地区で過去最も激しい戦闘が始まった。

ハマス運営のガザ保健省によると、ガザ地区での戦闘でこれまでに3万4000人以上のパレスチナ人が殺害された。そのほとんどは子供と女性という。

「指導的責任に鑑み」辞任

IDFの22日の声明によると、ハリヴァ氏は「10月7日の出来事に対する諜報局長としての指導的責任に鑑み、その職を辞することを申し出た」という。

ハリヴァ氏は辞表の中で、「あの陰鬱(いんうつ)な日を、あの日以来、毎日、毎晩、心に留めている。私は戦争の恐ろしい痛みを永遠に抱え続けるだろう」と述べた。

また、「困難な出来事に至ったすべての要因と状況を徹底的で、綿密で、包括的かつ正確な方法で調査・解明することができる」国家調査委員会の設置を求めた。

「IDFでの職務の中で私がしてきたことはすべて、イスラエル国民とイスラエル国家の利益のためだった」と、ハリヴァ氏は付け加えた。

ハリヴァ氏は襲撃から10日後に、諜報局の失敗の全責任は自分にあると述べていたことから、同氏の辞任は予想されていた。

ハリヴァ氏に続いて、IDF幹部や諜報局の複数の司令官も辞任する見込み。ほかの関係者も、昨年10月7日の襲撃に至るまでの過ちや過失を認めている。

IDFトップのヘルジ・ハレヴィ参謀総長と、イスラエル総保安庁(シンベト)のロネン・バー長官は、イスラエル国民を守ることができかった責任は自分たちにあると認めているが、ガザでの戦闘のために留任している。

ネタニヤフ首相への圧力増すか

ハリヴァ氏が辞任するという知らせは、ベンヤミン・ネタニヤフ首相にとってさらなる圧力になるかもしれない。

ネタニヤフ首相はこれまで、自らの役割に関する厳しい質問には今後答えると述べるにとどまっている。自身の責任は認めておらず、非難の矛先が安全保障の責任者たちに向くよう努めてきた。

ネタニヤフ氏は完全な調査の実施について、ガザでの戦闘が終わるまで待つべきだとしている。

最大野党を率いるヤイル・ラピド氏は、辞任するというハリヴァ氏の決断は「正当で名誉なこと」だとし、ネタニヤフ氏も「同じようにすべきだった」とソーシャルメディアに投稿した。

ネタニヤフ氏は21日に公開したビデオ声明で、ガザで今も拘束されている133人の人質について、22日からのユダヤ教の祝祭「過ぎ越し祭」(ペサハ)で愛する人たちと食卓を囲むことができないと嘆いた。

「それらの人々の苦しみと、その家族の苦しみは、我々の心を引き裂き、皆を連れ戻すという我々の決意を強める一方だ」

また、ハマスが人質解放の「条件を厳しくした」と主張。それに対して「痛みを伴う打撃をさらに加える」と警告した。

「今後数日間で、我々はハマスに対する軍事的・外交的圧力を強めていく。これが我々の人質を解放し、我々の勝利を達成する唯一の方法だからだ」と、ネタニヤフ氏は付け加えた。

ネタニヤフ氏は次の段階については明確に述べなかったが、イスラエル部隊はガザ南部ラファで作戦を開始するつもりだと、これまでに繰り返し述べている。

アメリカと国連は、家を追われたパレスチナ人150万人が避難しているラファに総攻撃を行えば、壊滅的な結果をもたらすことになると警告している。

(英語記事 Israel military intelligence chief quits over 7 October

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cydrj4mn89jo


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