科学で斬るスポーツ

2013年12月27日

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玉村 治 (たまむら・おさむ)

スポーツ科学ジャーナリスト、科学ジャーナリスト

小学校より野球をはじめ、大学では投手として活躍。スポーツを科学的に分析することを得意とし、バンクーバー、ロンドン五輪、ワールドカップサッカーなどで取材。

 ジャンプで大事なのは、助走速度を失わない踏み切り。しゃがんだ助走姿勢から膝や股関節を伸ばして、斜め上向きの「揚力」を得る。揚力は高さにつながり、高ければ高いほど滑空時間が長くなり、飛距離が伸びる。ただ上向きに速度を上げすぎると、進行(落下)方向の速度が失速してしまう危険もある。

 同時に、落下方向とは逆に空気抵抗を体全体で受ける。空気抵抗(抗力)が大き過ぎると、速度が遅くなってしまうという特徴がある。速度が遅くなると、距離は伸びない。つまり、揚力と抗力のバランスが重要ということになる。

 国立スポーツ科学センターの山辺芳研究員は「昨シーズン、高梨選手のトレーニング中の踏み切り時の重心の速度を分析すると、縦方向、横方向の数値がジャンプごとに異なっていた。変動幅が大きいのに記録は残す。熟練した選手ほど固有の動作パターンに集約することが多いジャンプ選手の中で、高梨選手の多様な踏み切り動作は極めて特徴的である」と強調する。

 つまり、ジャンプの度に縦方向、横方向の力の加減を自分でコントロールしていることを意味する。

 山辺さんは「助走の速度や、風向き、気温、雪質などその日のコンディションなどをもとに上向きの力、前向きの力を自在に調整していることが伺える。驚異的な適応力だ」という。

 驚異的な足腰の筋力と、柔軟性のなせる技だろう。膝、スネ、足首、股関節などの傾きを変貌自在に調節している。

 踏み切り時の下肢(スネあるいは足全体)の傾きは、その後の飛行姿勢を素早くとるための重要な要素となる。

 膝および股関節の伸展は基本的に重心の速度を上げるために使われる。膝や股関節をしっかり角度をつけて曲げていることは、上昇速度獲得を積極的に行っていることを示す。

「一直線型」から「への字型」踏み切りへ

 これ以外にも、もう一つ高梨選手で、注目して欲しいところがある。踏み切り直後の姿勢だ。この姿勢には腰を曲げる「への字型」と、真っすぐ伸ばす「一直線型」の二つある。高梨の姿勢が、最近一直線型からへの字型に変化していると言われているからだ。

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