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2014年1月16日

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岡崎久彦 (おかざき・ひさひこ)

NPO法人岡崎研究所所長・理事長。1930年大連生まれ。52年、東京大学法学部在学中に外交官試験に合格し外務省入省。外務省情報調査局長、駐タイ大使などを歴任し、92年に退官。著書に『隣の国で考えたこと』(78年日本エッセイスト・クラブ賞)、『国家と情報』『戦略的思考とは何か』『陸奥宗光とその時代』以下日本近代政治外交史5巻本などがある。

昨年12月26日の安倍首相の靖国参拝について、国内外で議論が沸き起こっている。本サイトコラム「世界潮流を読む 岡崎研究所論評集」でお世話になっている岡崎研究所代表・岡崎久彦氏による、靖国問題をめぐる論稿が1月13日付の産経新聞【正論】に掲載された。より多くの人に読んでいただきたく、岡崎氏と同社の許諾を得て、ここに転載させていただくこととなった。(編集部)

 首相の靖国参拝の報を聞いて、心の中の霧が晴れたように思う。もうこれで良いのだと思う。

 国民の大多数も同じ感情だったと思う。直後の世論調査では69%が参拝を支持し、安倍晋三内閣の支持率も上昇したという。

米国の「失望」表明は失策

 英語で、enough is enough(もうたくさんだ)という。靖国問題はもうおしまいにしてほしい、というのが日本人の一致した心情だといえよう。

 今後は定期的に参拝していただきたい。本来、安倍首相は政治的打算ではなく、日本人の良心として参拝を希望しておられた。人知れず参拝できればそれでも良いというぐらいのお考えだったと推察する。だから今回でご本人は一応ご満足かもしれないが、これを機会に年中行事にしてほしい。

 初め一、二回は波乱もあろう。米国も一言言ってしまって引っ込みがつかないでいる。今回の「失望感」の表明は、日米関係だけでなく、日中、日韓の関係悪化に拍車をかけるだけで、その改善に何ら役立たない。さらに米中、米韓の関係において米国は、この立場を継続せざるを得ない借財を自ら作ったが、それが米国の東アジア太平洋政策に益するところは何もないと思う。その意味で今回の米国のコメントは米外交のfaux pas(踏み誤ったステップ)であった。

 日米外務・防衛閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)で米国務、国防両長官が来日し靖国参拝を避けたときから、そのような感触は現在の国務省内からうかがえた。米国の意向を秘(ひそ)かに伝えるのなら、あれで十分だったと思う。それでも安倍首相が参拝するなら、同盟国日本の主権事項として沈黙すべきであった。日米間には、普天間飛行場移設問題、集団的自衛権行使容認に立脚する日米防衛協力の指針(ガイドライン)の見直しなど、両国の安全保障に死活的な緊急の懸案がまだまだ残っている。それらの解決に自ら障害を設ける必要など全くない。

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