2024年4月17日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年3月17日

 しかし、ソ連が崩壊したのは、ソ連・イデオロギーが国民から拒絶されたからだけでなく、経済が崩壊したからである。ロシアの機能不全を治すことができなければ、プーチン政権も同じ道を辿ることになろう、と指摘しています。

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 この記事は、ロシアの現状と今後の見通しについて的確な判断をしています。記事はウクライナの政変の前に書かれたものですが、ロシアがクリミアへの支配を強めるなどのことがあっても、記事が示している長期的見通しに、変更すべき点はありません。

 ロシア経済は、この記事が言うように、石油・ガス資源に依存し過ぎており、かつ腐敗が蔓延しています。製造業が小さな利益を積み上げることにより成り立つのに対し、資源輸出などは、資源価格が上がれば簡単に巨富を手に出来ます。資源があると経済がいびつになり、上手く成長出来なくなる現象を「資源の呪い」と言いますが、ロシアはその罠に落ちてしまっている感があり、いわゆる「レンティア 国家」(もっぱら天然資源等によるレント収入で賄われている国家)にロシアはなってきています。こういう国家では、国民は国家からの恵みを受けることになります。ボストンでの茶会事件の時のスローガンは「代表なくして課税なし」でしたが、レンティア国家では、逆に「課税がないから、代表もない」ということで、民主主義がなかなか発展しません。サウジやアラブ首長国連合がそうですが、ロシアもそれに似てきています。ロシアの優秀な若者には、民主主義がなく、汚職が多く、医療も劣悪なロシアに愛想を尽かし、米国への移住などを望む人が多いようです。

 経済構造改革はやらなければならないとロシア指導部は考えているし言ってもいますが、利権構造改革、汚職撲滅などは、既得権層を支持基盤とするプーチンには、なかなか難しいのではないかと思います。

 ロシアは新興国と言われますが、実際は、人口も減少している衰退国です。日本はロシアを過大評価も過小評価もせずに、正確に評価し、政策を立てて行くべきでしょう。ロシアのGDPは中国の4分の1、日本の3分の1くらいです。ロシアは中国のジュニアー・パートナーでしかないと考えるのが適切であり、対中戦略でロシアを「使える」などということはありません。そういう発想をあたかも「戦略的」と考えるような風潮は危険です。

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