エコノミスト誌2月1-7日号が、対外的成功と冬季オリンピック開催でプーチンは勝利を収めたように見えるが、ロシアは肝心の経済が脆弱で足枷となっている、と指摘しています。
すなわち、2013年はプーチンにとって良い年だった。国内的には2012年の大規模抗議運動を乗り切り、強力なライバルがいない中、ホドルコフスキーやパンク・グループPussy Riotに恩赦を与える余裕さえあった。
対外的には、国連安保理で拒否権を行使して西側の対シリア軍事介入を阻止して、化学兵器問題を仲介し、シリア和平会議をお膳立てした。国防費も引き上げた。さらに、ウクライナのヤヌコビッチをカネと脅しで説得し、成立寸前だったEUとウクライナの連合協定の交渉中断に成功し、ソチでは冬季オリンピックを華々しく開催しようとしている。
しかし、ロシアの内実は良くない。それは、腐敗と国家支配の経済が足枷となっているからである。
プーチンがロシア国民に支持されたのは、プーチンがロシアを強国にすると約束したからだけでなく、安定と生活水準の向上をもたらしてくれると思われたからである。確かに、プーチン政権下でロシア経済は急成長、国民の所得も上昇し、年金等の社会保障費も支払われるようになった。しかし、こうした成果は、ほぼ完全に石油・ガス収入のおかげだった。石油・ガス価格は、1999年以降、5倍も値上がりしている。石油・ガス輸出への依存はさらに強まり、今やロシアの輸出の75%は石油・ガスが占めている。
他方、ロシアの工業は高い労働コストと低い生産性のために国際競争力がなく、店で売られる商品の大半は輸入品である。投資は低迷し、能力ある若者と資本の国外逃避が止まらず、蔓延する腐敗と非効率によって巨額の無駄が生じ、不正資金が海外口座に蓄積されつつある。
そうした中、10年前は石油1バレル約20ドルで収支がバランスしたロシアの国家予算は、今や103ドルでないとバランスしない。ところが、ロシア石油の価格は108ドルまで落ちており、しかも、シェールガス・ブームのおかげで石油・ガス価格が今後さらに下落するのは必至である。そのため、ロシアのGDP成長率は2013年には推定でせいぜい1.5%以下、2014年に2%と、ユーロ圏の弱小国と同レベルにあり、他のBRIC諸国から、はるかに引き離されてしまった。
勿論、問題は統治にあり、競争力強化・国営企業の民営化・投資家保護・信頼できる司法制度の確立等、改革すべきことは何か、はっきりしている。ところが、経済支配を通して政治を支配しているプーチン政権は、石油収入の独占、国営企業、恣意的に変えうる司法制度等に支えられた現状を変えるわけにいかない。