2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年4月10日

 米Truman National Security Project研究員のMelissa S. Hershと在ニューデリー防衛分析研究所研究員のAjey Leleが、2月17日付Diplomat誌ウェブサイト掲載の論説で、宇宙空間には多数の衛星の残骸が存在し危機が増大しており、それに対処するため国際協力が必要である、と述べ、米印日韓豪による協力の可能性を指摘しています。

 すなわち、旧ソ連が1957年にスプートニックを打ち上げてから、6000以上の衛星が宇宙空間に打ち上げられた。宇宙空間はその過密度を増し、競争が激しくなっており、宇宙は衛星の残骸や、宇宙兵器にかかわる活動で危機が増大している。そのような危機を管理する第一歩が「宇宙状況認識」(space situational awareness, SSA)である。SSAはレーダー、衛星、望遠鏡を使って宇宙の残骸などの動きをリアルタイムで追跡し、打ち上げた衛星が宇宙の残骸と衝突する危険のあることを、打ち上げた機関に事前に知らせるものである。現在では米国の宇宙空間監視ネットワーク(Space Surveillance Network, SSN)が、すべてではないが宇宙の残骸を追跡し、宇宙を利用している機関に事前の警告を発することができる。

 しかし、衛星と衛星の残骸が増加しているので、他の地域に宇宙空間を監視する基地ができ、世界的な機関が設置される必要がある。その点、アジア・太平洋地域は宇宙活動に投資をしている国があるので、地域的なSSA機構を設置するのに適している。

 SSAは軍事面では、ミサイルと宇宙の残骸の違いを明らかにするという役目を果たすが、それ以外に宇宙での資源開発、宇宙ステーションや衛星などの重要なインフラの保護といった、宇宙経済の統治にかかわる多面的な安全保障上の利害がある。

 宇宙空間での活動には責任が伴う。海洋法などの国際条約がその責任をいかに公平に分担するかの指針を与えてくれるかもしれない。

 その点EUが、「宇宙空間での活動の行動規範」を提唱していることは推奨に値する。同「行動規範」案は、互恵的な危機管理原則に基づいており、宇宙活動の政府、民間双方の利害関係者に適用されるものである。

 宇宙空間には現在解決を必要とする2つの主要な問題がある。宇宙の残骸と宇宙空間の兵器化である。


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