相次ぐ米政府高官の
対中強硬発言

南シナ海における米VS中


世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察するコラム。

»最新記事一覧へ

2月25日付National Interest誌のサイトで、Robert Haddick米特殊作戦軍契約要員は、中国の東・南シナ海への進出について、米高官が最近、中国のさらなる進出を防ぐためレッドラインを設置することを示唆しているが、問題は、米国が十分な軍事力でそれをバックアップできるかである、と述べています。

 すなわち、米国はこれまで中国に対し自制の政策をとってきたが、その間中国は西沙・南沙諸島の一部を占拠し、東シナ海に防空識別圏を設置するなど、地域で着実に進出してきた。これに対し最近、メディロス米NSCアジア上級部長が、中国の東シナ海防空識別圏設定は正統性がない、南シナ海に同様な措置を取れば、地域での米国の軍事姿勢は変わるだろう、と述べ、ラッセル国務次官補が、米国政府当局者として初めて中国の「九点線」を拒否し、グリナート米海軍作戦部長が、南シナ海でフィリピンが中国と紛争になれば米国はフィリピンを支援する、とそれぞれ述べた。

 このような最近の米高官の対中強硬発言は、これまでの米の対中自制策の終わりを意味するものかも知れない。これまで米政府は中国を威嚇せず、歓迎の姿勢を示せば中国自身が過去30年間大きな恩恵を得てきた国際体制を受け入れるものと期待してきた。しかし、中国の2008年以来の行動を見ると、中国が米国の自制を米国の弱さと考えた可能性がある。中国が米国の期待した行動に出なかったので、米政府は中国により強く対処する必要があると考えるに至ったようである。

 しかし、もし米国が南シナ海にレッドラインを設置する場合、それをバックアップできるだろうか。

 2年以上前に発表された「アジア・リバランス」戦略も、海・空軍力の6割をアジア太平洋地域に配備するとの約束も、中国の小刻みながら着実な進出を抑止しなかった。シリアの例が示すように、相手方にレッドラインは突破できないと信じさせることができない限り、レッドラインは設置すべきでない。

 中国が南シナ海に防空識別圏を設定したら地域の米軍事力を一層強化するとのメディロスの約束はこけおどしになりかねない。米国には南シナ海地域に恒常的に配備する予備戦力がない。米国の地域の司令官の空母の通常配備に対する要請に応じるのに要する時間が6か月から8か月、あるいはそれ以上になることが予想されている。攻撃型潜水艦も同様の状況で、潜水艦隊が縮小されれば状況は悪化する。

 中国は20年にわたりミサイルと潜水艦を重視する軍の近代化を進め、西太平洋の米軍基地と戦艦に対する、地上発射ミサイル、航空機、潜水艦からなる戦力を急速に拡大し、接近拒否軍事戦略を進めている。これに対し米国の空・海軍力の中心は比較的レンジの短い航空機とミサイルで、この種の戦力の前方基地配備を増やしても、米軍の危険を増すのみで、中国の行動の抑止にはならない恐れがある。

1
nextpage
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
「世界潮流を読む 岡崎研究所論評集」

WEDGE Infinity S
ウェッジからのご案内

Wedge、ひととき、書籍のご案内はこちらからどうぞ。

  • WEDGE
  • ひととき
  • ウェッジの書籍