中国メディアは何を報じているか

2014年4月11日

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佐々木智弘 (ささき・のりひろ)

防衛大学校人文社会科学群国際関係学科准教授

1994年慶應義塾大学大学院前期博士課程修了。日本貿易振興機構アジア経済研究所東アジア研究グループ長を経て、2014年2月から現職。共著に『習近平政権の中国』(アジア経済研究所)、『現代中国政治外交の原点』(慶應義塾大学出版会)。

 他方、この論説には次のような一文も見られた。

「(住民の)利益表出には『法』をしっかりと守る必要があり、少数のものは混乱に紛れて利益を得て、わけもなく衝突をエスカレートさせ、問題をレベルアップさせており、すでに法律の(許容する)最低ラインに抵触している」

 これは反対運動を起こした側の問題点を指摘しており、これまでの論説とは異なる。そして4月3日の記事も、ネット上に流れたウワサがデマであることを明らかにするという体をとった。これまでとは『人民日報』の報じ方に変化が見られる。

茂名での反対運動の違法性を強調

 習近平政権が昨年5月以降、社会的不安定をもたらす要因の一つとなっているネット上でのデマの取り締まりを強化しており、その延長線上にあるといえる。多数の死者が出た、当局の阻止介入があった、戦車が投入されたといったウワサは、単なるPXへの不満が社会不安をもたらし、ひいては政権批判に転化するかもしれないという警戒感から早期にデマとして一掃しなければならなかったのだろう。

 その中で、違和感があるのは、3月30日のデモの経緯を紹介したことである。これまでデモの経緯を報じた記事は筆者の記憶にない。経緯の紹介が、純粋な不満表出から「不法分子」「違法分子」の特殊な行動へとデモが転化したことを強調している点に留意しなければならない。

 そのことは4月3日の記事の最後に紹介している茂名市政府の見解にも表れている。

「茂名市民のPXプロジェクトに対する関心を考慮し、市政府は現在PX項目建設着工の具体的なタイムテーブルを制定していない。環境評価、本提案などをまだ展開していない。社会の十分な共通認識に達していなければ、スタートできない。市政府は同時に、関連部門が市民大衆の合法的な意見表出と不法分子の機を借りて騒ぎを起こすことの2つの性質の明らかに異なる行為を区別しなければならない」

 4月3日、茂名市公安機関はPX事件の違法犯罪容疑者44人のうち18人を逮捕した。その容疑は、大勢の人を集めて社会秩序を乱す、大勢の人を公共の場所での秩序を乱す、挑発してトラブルを起こすなどの犯罪行為とした(『人民日報』2014年4月4日)。

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