IPCCの温暖化抑制シナリオは実現できるか

統括執筆責任者が解説する IPCC・2度シナリオの読み方


杉山大志 (すぎやま・たいし)  IPCC第5次評価第3部会報告書 統括執筆責任者

1991年東京大学理学部物理学科卒業。93年東京大学大学院工学研究科物理工学修士了、(一財)電力中央研究所入所。国際応用システム解析研究所(IIASA)研究員、国際学術会議科学執行委員、京都議定書CDM理事会パネル委員、産業構造審議会専門委員、IPCC第四次評価第三部会及び統合報告書主著者を経て、現職。(一財)電力中央研究所上席研究員。

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ビジネスの現場で日々発生しているファクトを、時間軸の長い視点で深く掘り下げて、日本の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、4月13日、ドイツ・ベルリンで開催された総会で新たな報告書を発表した。筆者は、日本から唯一人、統括執筆責任者として参加した。

杉山大志氏(第5次評価第3部会総括執筆責任者)

 今回のIPCC報告書では、「地球温暖化を2度以下に抑制するシナリオ」(以下、2度シナリオ)について詳しく報告されている。

 一部報道では、「IPCCは、2度シナリオは実現可能であり、世界はそれを目指すべきであると提言した」というものがある。だがこれは間違いである。IPCCは「提言」はしていない。そもそも提言することは禁じられているからである。IPCCは、2度シナリオとは、どのような技術的対応を意味するかということ、および、その実現のための前提条件について記述している。

 あるいは、「2度シナリオは再生可能エネルギーなどによって技術的にも実現可能であり、経済全体からみればコストも安く済むことを示した」という報道もあるが、これも誤りである。2度シナリオの実現のためには、現状からみると、技術と政治の両面で奇跡的ともいえる変化が必要である。これは不可能ではないが、決して容易ではない。以下に説明する。

2度シナリオとは

 IPCC報告では、いわゆる「2度シナリオ」が注目を集めている。その骨子は以下のとおりである。

1.地球温暖化を産業革命前に比べて2度以下に抑制することは、おおむね、2050年までに世界全体で2010年時点に比べて40〜70%の排出削減を意味する。このとき、再生可能エネルギー、原子力、CCS(発電所などから排出されるCO2を地中に埋める技術、carbon capture and storage)の合計による低排出エネルギー供給は2010年時点の3倍から4倍に達する。

2.このような2度シナリオが実現するための条件は、世界の国々が一致協力して排出削減に取り組むこと、および、多くの温暖化対策技術が進歩し普及することである。つまり国際協調と技術革新の両者が条件となる。

 前述したように、IPCCは、政策を分析することを義務付けられているが、政策提言は禁止されている(be policy relevant without policy prescriptive)。今回も2度シナリオを提言したのではなく、2度シナリオが実現するための条件を検討して提示した。

2つの前提条件

 ここから先、どのような判断をするかは政治に委ねられる。上記の1点目は分かり易いが、2点めについては説明がいる。「国際協調と技術革新の両者」とは、どういうことだろうか?

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著者

杉山大志(すぎやま・たいし)

IPCC第5次評価第3部会報告書 統括執筆責任者

1991年東京大学理学部物理学科卒業。93年東京大学大学院工学研究科物理工学修士了、(一財)電力中央研究所入所。国際応用システム解析研究所(IIASA)研究員、国際学術会議科学執行委員、京都議定書CDM理事会パネル委員、産業構造審議会専門委員、IPCC第四次評価第三部会及び統合報告書主著者を経て、現職。(一財)電力中央研究所上席研究員。

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