星野リゾートが考える25年後の日本の観光
迎える大転換 旅館が切り札に

星野リゾート代表 星野佳路氏


Wedge編集部

【WEDGE創刊25周年特集】英知25人が示す「日本の針路」

1989年5月号の創刊から、弊誌も今年25周年を迎えた。創刊後、ベルリンの壁崩壊、湾岸戦争勃発、バブル崩壊、55年体制の崩壊、米国同時多発テロ、アラブの春、東日本大震災……、実に様々な出来事が国内外で起きてきた。89年当時、日本がその後迎える「失われた20年」を予想し得た人は、どれだけいただろう。後ろを振り返っている時間は今の日本にはない。日本が「失われた20年」を二度と繰り返さないために、どういった方向に進んでいくべきか、国内外25人の“英知”がそのヒントを提示する─。

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外資系ホテル立ち並ぶ東京・大手町に、16年に高級旅館「星のや東京」を開業させる星野リゾート。同リゾート代表・星野佳路氏に、将来の日本を支えると期待される観光業について、今後の行方を尋ねた。
 戦後、長く日本経済を牽引してきた製造業だが、生産拠点を人件費の安い海外に移している。地方都市はこれによって疲弊してきたが、今後もこの流れは続くかもしれない。製造業に代わり、地方経済を支えられる可能性を持つのは農業や医療、サービス産業だ。私の担当する観光業にもその使命が課せられている。

 現在、観光業最大の課題は「生産性の向上」だ。トップシーズンには人が溢れるが、オフシーズンはガラガラ。偏った需要を平準化できれば、施設も人員も稼働率が上がり、生産性は様変わりする。消費者も宿泊費の高騰や混雑を回避でき、平準化は需給双方にとって好都合である。

 私が提言しているのが大型連休の地域別取得だ。地域ごとに休暇をずらせば、混雑は緩和され「大型連休は混んでいるから出かけない」という人を減らすことができ、潜在需要の顕在化につながる。観光先進国のフランスも、はるか以前から地域ごとの休暇の分散化を制度化している。

 これにより観光業は、稼働日数が増え、臨時雇用やパートタイマーを正規雇用に転換できる。生産性向上で増加した利益は従業員の賃金向上と投資に向けられる。利益率向上が明らかになると、投資家からも資金が集まる。この好循環を生み出すことができれば、観光業が日本の地方経済の主役になる可能性も生じる。

 2010年、我が国の観光需要は約21兆円となった。内訳は日本人が9割以上、外国人が1割弱だ。今後も訪日外国人観光客は増加していくが、倍になっても2割だから、10年後あるいは15年後であればまだ国内需要が主体だろう。

星野佳路(ほしの・よしはる)星野リゾート代表。 1960年生まれ。米コーネル大学ホテル経営大学院で修士号取得。88年星野温泉旅館(現星野リゾート)へ。いったん退社、91年復帰、トップ就任。
(撮影・井上智幸 )
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