2024年4月25日(木)

【WEDGE創刊25周年特集】英知25人が示す「日本の針路」

2014年5月13日

 しかも組をやめて5年たたない者は現役の組員と同じく新規に銀行口座を開設できない。よって運よくカタギの職を得たとしても、給与の銀行振り込みが利用できない。元組員となると、生活保護を受給するのも難しい。

 結局、彼らは犯罪グループ、半グレ集団に加わり、オレオレ詐欺をはじめとする特殊詐欺や強盗・窃盗など、新たな犯罪に手を染めていく。それが嫌なら無銭飲食など軽い事件を起こして逮捕され、短期間、刑務所に入る。刑務所では少なくとも衣食住が保障される。刑務所が元組員たちのセーフティネットになっている。

 長らく日本だけに見られたヤクザ、暴力団は今後25年の間に消滅しないまでも、限りなく衰微していく。

 そのかわり数を増やすのは名も知れぬ無数の犯罪グループである。彼らは自分たちが犯罪グループであることを人に知られまいとする。知られれば即逮捕だから、犯罪グループ同士の交際もほとんどしない。地下に潜った犯罪集団である。

 警察は暴力団については統計を出せるほど調べを重ねているが、新興の半グレ集団、犯罪グループについてはほとんどデータを蓄積していない。また暴力団に対しては暴対法や暴排条例など、攻め込む武器を持っているが、半グレ集団などに対しては特別法を持たず、単に刑法を適用していくしかない。

 こういう存在は社会にとって脅威か。たしかに暴力団は分かりやすい存在だが、分かりにくい犯罪グループを必要以上に恐れる必要もない。考えれば諸外国とも多少は犯罪グループを抱えながら、それなりに治安を維持している。捜査面で国際共助体制が整うのに合わせ、犯罪する側も国際的に一律になっていく。日本特殊型の暴力団はそうした動きから弾き出されていく存在だろう。

■創刊25周年記念特集 「25年後を見据えた提言」
英知25人が示す「日本の針路」
◎経済、企業
石黒不二代(ネットイヤーグループ社長兼CEO)「ネットが動かす未来のマーケティング」
浜田宏一(米イェール大学名誉教授、内閣官房参与)「“成熟した債権国”化する日本の今後の針路」
村上太一(リブセンス社長)「起業家育成へ教育・選挙改革を」
ポール・サフォー(未来学者、デジタルフォーキャスター)「シリコンバレーの強みは何か」
ヒュー・パトリック(米コロンビア大学名誉教授)「日本人よ もっと外の世界へ飛び出せ」
入矢洋信(トーヨー・タイ社長)「海外の事業は、まずはやってみる、やらせてみる」
千本倖生(起業家、元イー・アクセス社長/会長)「起業家は描きうるなかで最大の夢を持て」
◎政治、国際関係、安全保障
中西輝政(京都大学名誉教授)「25年後の米中と日本がとるべき長期戦略」
井上寿一(学習院大学長/法学部教授)「高まる“大統領型”首相待望論 将来の日本政治の姿」
ジェームズ・ホームズ(米海軍大学准教授)「軍事的ジレンマに陥る中国 日米のチャンス」
鈴木英敬(三重県知事)「地方分権の議論は発想が逆」
小谷哲男(日本国際問題研究所主任研究員)「太平洋を“開かれた海”へ “関与”戦略への転換」
山田耕平(レアメタルトレーダー)「草の根国際協力を国益に繋げ」
◎教育、人材活用、医療、司法
松田悠介(Teach For Japan代表理事、京都大学特任准教授)「日本の教育現場に課題解決能力の高い人材を」
菊川 怜(女優)「大学で学ぶということ」
駒崎弘樹(認定NPO法人「フローレンス」代表理事)「“イクメン”がデフォルト化している日本を創る」
亀田隆明(医療法人鉄蕉会・亀田メディカルセンター理事長)「日本は世界の医療産業国を目指せ」
山本雄士(ミナケア代表取締役)「さらば“ブラック・ジャック”名医論」
麻生川静男(リベラルアーツ研究家)「日本人のグローバルリーダーを育てるために」
久保利英明(日比谷パーク法律事務所代表弁護士)「世界に立ち遅れた日本の司法界 改革への3提言」
◎復興、観光、スポーツ、芸能、暴力団
星野佳路(星野リゾート代表)「25年後に大転換迎える日本の観光 旅館が切り札に」
宮本慎也(元プロ野球選手)「野球界に必要な地盤固め」
三遊亭圓歌(落語家/落語協会最高顧問)「古き良き“寄席”の笑い」
溝口 敦(ノンフィクション作家、ジャーナリスト)「衰微する暴力団、台頭する半グレ集団」
西本由美子(NPO法人「ハッピーロードネット」理事長)「福島浜通りへの帰還」

◆WEDGE2014年5月号より









 

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