暴力団、新興宗教、パチンコ業界などについての執筆活動を続け、数々の賞を受賞してきた溝口敦氏が「反社会的勢力の今後」について論ずる。
ノンフィクション作家、ジャーナリスト。1942年東京都生まれ。主として日本社会の暗部である暴力団や新宗教に焦点をあてて執筆活動を続ける。『食肉の帝王─巨富をつかんだ男 浅田満』で第25回講談社ノンフィクション賞受賞。(撮影・吉澤健太)
およそ25年前、「平成元年版警察白書」を見ると、暴力団構成員数は8万6552人になっている。
3年後、暴力団対策法が施行されたときには9万600人と増え、その後長く暴力団の組員数は横這いを続けてきた。
様相が変わったのは全都道府県で暴力団排除条例が出揃った2011年からで、去年はなんと警察庁が統計を取り始めてから初めて6万人を割り込み、5万8600人になった。
今は暴力団の組員であっても、組の周辺層であっても、とにかく食えない。組事務所が集める月会費さえ納められず、暴力団からもドロップアウトせざるを得ない組員が続出している。
暴力団に対しては、暴力団対策法よりむしろ都道府県の暴力団排除条例や銀行業界などの暴力団排除条項が効いたのであり、今後もこれらが続くかぎり、暴力団は減少の一途をたどるだろう。今後25年間を見ても、こうした傾向はずっと続いていくはずである。
が、これで街は平穏、安全が保たれるとはならない。新たに暴力団に籍を置かない半グレ集団が台頭しているからだ。半グレ集団というと、暴走族出身の関東連合や怒羅権(ドラゴン)を思い浮かべる人が多いだろうが、彼らに限ったことではない。
早い話、暴力団の組員でなければ暴力団対策法の適用を受けず、一般人(カタギ)とみなされる。が、一般人の中にも暴力団並みの犯罪に手を染めてケロッとしている者が増えている。おまけに膨大な数の元組員たちが残されている。彼らが大変な思いをして暴力団をやめたとしても、次の職に就けない。一般人でさえ就職や再就職が難しい時代である。元組員を雇おうという事業所はそうそうない。