国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は18日、食料を積んだ国連の援助物資輸送トラック109台の車列が16日、パレスチナ・ガザ地区で激しい略奪にあったと発表した。
これにより、トラック97台が失われた。運転手たちは銃を突きつけられ、ガザ南部とイスラエルを結ぶケレム・シャローム検問所を通過後、援助物資を降ろすよう強制された。同様の事件の中では、最悪のケースのひとつだとみられている。
複数の目撃者によると、覆面をした男たちが手榴弾(しゅりゅうだん)を投げ込んで輸送車列を襲撃したという。
UNRWAのフィリップ・ラザリーニ事務局長は、襲撃犯の身元には言及しなかったものの、ガザ地区では「市民社会の秩序が完全に崩壊」していることから、同地区は「活動不可能な環境」になっていると述べた。
UNRWAはかねて、早急に介入しなければ、ガザ地区で人道支援に頼って生きている200万人が、さらに深刻な食糧不足に直面すると警告している。
今月初旬に発表された国連が支援している調査は、「ガザ地区北部の地域では飢饉(ききん)が差し迫っている可能性が高い」と警告していた。
イスラエル軍はこのところ、ガザ北部で大規模な地上攻撃を続けている。国連は先月、2023年10月のイスラエルとガザ地区のイスラム組織ハマスの戦争開始以来、ガザ地区に入った支援トラックの数が最も少なかったと発表した。
16日の略奪行為は、ロイター通信が最初に伝えた。同通信はガザ地区のUNRWA当局者の話として、輸送車列がイスラエル当局から「ケレム・シャロームから不慣れなルートで、すぐさま出発する」よう指示されたのだと報じた。
ハマスがガザ地区で運営する内務省は、伝統的な氏族ネットワークの「氏族委員会」と協力して実施した作戦で、「援助物資を積んだトラックで窃盗を行ったギャング団のメンバー20人以上」を殺害したと発表した。
UNRWAのラザリーニ氏は18日にジュネーヴで記者会見し、ルートについて質問された際にはコメントできないと答えた。しかし、略奪行為については認め、「私たちはかなり前から、市民社会の秩序が完全に崩壊していると、警告してきた」と述べた。
「4、5カ月前まではまだ、地元住民による車列の護衛が可能だった。今ではそれが完全になくなってしまい、南部でのあらゆる事業や活動の主導権を握ろうと、地元のギャングや家族が互いに争っている状況だ。援助活動を展開するには、不可能な環境になってしまった」
ラザリーニ氏はまた、食料を求めて必死になっている数百人が、南部ハンユニスでUNRWAが運営する職業訓練センターに物資が届いたと考え、センターに殺到したと説明した。
「だが輸送車列は略奪されていたので、その倉庫から運び出せるものは何もなかった」
UNRWAはX(旧ツイッター)に投稿した別の声明で、イスラエル当局が「住民の基本的ニーズを満たし、援助物資の安全な配送を促進するという国際法上の法的義務を無視し続けている」と非難した。
「このような責任は、トラックがガザ地区に入ってから、不可欠な支援が住民に届くまで継続する」
イスラエル軍はこの出来事について、すぐにコメントしていない。
イスラエルは「対策を講じている」と
ガザで人道問題を担当するイスラエルの軍事組織、イスラエル占領地政府活動調整官組織(COGAT)はこれより先に、「国連の援助団体が援助物資の配布で困難に直面しているため、我々はケレム・シャーロム検問所から援助を必要としているガザ地区の人々への援助物資の輸送を促進しようと、さまざまな対策を共に講じている」と述べた。
「数カ月前から、イスラエルによる検査済みの援助物資が、ガザ地区側に山積みになり、受け取りと分配を待っている状態だ。我々は、援助物資の受け取りを支援するために、多くの対策を講じてきた」
イスラエルは以前、ガザ地区への、あるいはガザ地区を通過する援助物資の量に制限はないと主張し、ハマスが援助物資を盗んでいると非難した。ハマスはこれを否定している。
先週、NGO29団体によるグループが発表した報告書では、輸送車列の略奪は、「イスラエルがガザ地区に残る警察部隊を標的にしたこと、生活必需品が不足していること、輸送ルートが断たれたこと、ほとんどの検問所が閉鎖されたこと、そして、こうした悲惨な状況の中で住民が必死で、破れかぶれになっていること」が原因だと述べている。
この報告書が引用したメディアの報道は、「多くの事件がイスラエル軍のすぐ近くで、あるいはその目の前で発生しているが、トラックの運転手が支援を求めてもイスラエル兵は介入しない」と伝えている。
イスラエルの空爆で30人以上死亡
パレスチナ当局によると、18日に行われたイスラエルの空爆により、ガザ地区全体で30人以上が殺された。
ガザ北部ベイト・ラヒアにあるカマル・アドワン病院の近くでは住宅が攻撃され、少なくとも17人が死亡したと伝えられている。
ガザ地区の保健省の責任者は、カマル・アドワン病院のフッサム・アブ・サフィヤ院長の話として、死亡したのは同病院のハニ・バドラン医師の家族だと述べた。バドラン医師が病棟で慰められている様子だという動画も投稿されている。
また、ハマスが運営する民間防衛隊は、ガザ市から北西にある住宅が空爆され、救助隊が7人の遺体を収容したと発表した。
このほか、子ども2人を含む4人が、ガザ南部にあるアル・マワシ人道地域内のテントへの攻撃で殺された。この人道地域はイスラエルが設置したもの。
ハマスは昨年10月7日にイスラエル南部を奇襲し、約1200人を殺害、251人を人質に取った。これを受け、イスラエルはガザで軍事作戦を開始した。
ハマスが運営するガザ保健省によると、ガザではこれ以来、4万3920人以上が殺害されている。
(英語記事 Almost 100 Gaza food aid lorries violently looted, UN agency says)