チャイナ・ウォッチャーの視点

「数学1点」劣等生から奮起 アリババ・馬雲

富坂 聰 (とみさか・さとし)  ジャーナリスト

1964年、愛知県生まれ。北京大学中文系に留学したのち、豊富な人脈を活かした中国のインサイドリポートを続ける。著書に『苛立つ中国』(文春文庫)、『中国という大難』(新潮社)、『中国官僚覆面座談会』(小学館)、『ルポ 中国「欲望大国」』(小学館新書)、『中国報道の「裏」を読め!』(講談社)、『平成海防論 国難は海からやってくる』(新潮社)、『中国の地下経済』(文春新書)、『チャイニーズ・パズル―地方から読み解く中国・習近平体制』(ウェッジ)などがある。

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めまぐるしい変貌を遂げる中国。日々さまざまなニュースが飛び込んできますが、そのニュースをどう捉え、どう見ておくべきかを、新進気鋭のジャーナリストや研究者がリアルタイムで提示します。政治・経済・軍事・社会問題・文化などあらゆる視点から、リレー形式で展開する中国時評です。(画像:Thinkstock)

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 北京の「都市報」で経済を担当する記者が解説する。

 「馬は1964年生まれで、杭州師範学院卒業後に杭州電子科技大学の英語教師を経て起業と説明されていますが、プロフィールほど単純な経歴ではありません」

一度は大学進学も断念

 まず、彼の少年時代は喧嘩に明け暮れていた。決して成績の良い子供ではなく、劣等生といって差し支えない状態だった。中学も高校も三流どころか四流の学校へ進学。大学に入るための統一試験には2度挑んでいるが、数学の成績は1度目が1点、2度目が31点だった。彼は大学進学をあきらめ三輪自動車の運転手となった。

 「転機は『人生』(路遥著)という1冊の本との出会いでした。挫折を乗り越えた者こそ人の上に立てるというこの本に啓発された馬は再度奮起して大学に入るのです」(前出の記者)

 外国語学部で英語を習得した後、英語教師をしていた馬は95年に渡米。そこで初めてネットビジネスと出会い、帰国して4年後の99年にアリババを立ち上げたのだ。

 当初、アリババを支えたのはB2Bだったが、すぐに市場が低迷、それと同時に盛り上がってきたのが個人市場だったのだ。

 「ここで『淘宝網』が特徴的だったのは、最初の数年は無料で顧客を広げたことです。通常ならば発生する店舗料や登録料、成約報酬などを取らずにまずシェアを奪い、その後にビジネスにしようという作戦です。これが奏功しました」(前出の記者)

 当時、貿易の不振で外資との取引を失った繊維産業から大量の在庫がネット市場になだれ込み価格破壊が起きた国内事情も重なりビジネスは爆発的に拡大したのだ。

 いまや中国のヤフーのオーナーともなった馬の座右の銘は「永遠不放棄」(絶対に諦めない)である。記憶される名言は、「瞬間的な情熱は無意味である。持続できる情熱だけがビジネスになる」である。

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富坂 聰(とみさか・さとし)

ジャーナリスト

1964年、愛知県生まれ。北京大学中文系に留学したのち、豊富な人脈を活かした中国のインサイドリポートを続ける。著書に『苛立つ中国』(文春文庫)、『中国という大難』(新潮社)、『中国官僚覆面座談会』(小学館)、『ルポ 中国「欲望大国」』(小学館新書)、『中国報道の「裏」を読め!』(講談社)、『平成海防論 国難は海からやってくる』(新潮社)、『中国の地下経済』(文春新書)、『チャイニーズ・パズル―地方から読み解く中国・習近平体制』(ウェッジ)などがある。

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