2024年12月4日(水)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2014年4月28日

WSJなどの報道によると、中国の電子商取引大手・アリババ・グループ・ホールディングは、米国で夏に予定している新規株式公開(IPO)について、新株発行を加える方向で銀行団と調整しているもようだという。最終的な決定は下っていないものの、新株発行を加えるとするとIPOでの調達額は200億ドル(約2兆円)を超える可能性も指摘され、注目を集めている。グループを率いる馬雲とは、どのような人物なのだろうか。

 中国の新興企業の雄、阿里巴巴(以後、アリババ)集団とそのグループを率いる馬雲(ジャック・マー、会長)の名前は早くから中国大陸に響き渡っていた。だが、私が彼の名を強く意識したのは2008年、四川大地震の直後のことだった。

中国の浙江省杭州において開かれたイベントでスピーチするアリババ集団の馬雲(提供・アフロ)

 当時、中国のネットでは有名人や成功者が行った寄付をめぐり「額が少ない」と攻撃する「仇富」という現象が顕著であった。馬もその犠牲者の1人だった。とりわけ彼が06年に行った講演で企業の社会貢献を尋ねられ「問題は金額ではなく1元でも集まれば強い力になる」と発言したことを挙げられ、「ケチ」、「銭ゲバ」と罵られ「馬一元」と渾名(あだな)までつけられた。明らかに有名税的な被害だったが、逆に馬の中国での知名度を証明した事件として私の記憶に残った。

 電子商取引最大手のアリババ。11年9月期の純利益が3億3900万ドルにも達し対前年比で8倍弱と伸び盛りである。そのメインエンジンは「淘宝網」と「天猫」という2つの個人向け通販サイトであり、年間取引額は1兆元(1606億ドル)を突破して話題となった。同グループは、「さらに10年後を目処に10兆元をクリアする」と鼻息が荒いが、実際にB2B(企業間取引)を除いた個人間で示している対前年比171%の伸びからすれば、達成できない数字ではないともっぱらの評判だ。

 すでにCEO職を後進に譲った馬だが、それを額面通りに受け止める者は中国経済界にはいない。

 馬とはどんな人物なのだろうか。

 改革開放のなか勃興した経営者の多くは泥臭いたたき上げだが、政策が進行した後半には高学歴の海外留学組が台頭した。その中心がIT業界である。そのため馬も「海亀組」(海外からの帰国を意味する「海帰」と発音が同じ)と勘違いされるが実はそうではない。


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