2024年12月22日(日)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2011年11月28日

 中国を追うように猛スピードで経済成長を続けるインド。このほど首都ニューデリー、南部バンガロール、西部ムンバイの各都市を取材する機会を得た。約1週間というかけ足の日程だったが、人口12億のパワーと混沌を目の当たりにして、いまだに目まいが治まらない。チャイナ・ウォッチャーとして、中国との比較も交えながら「インドの今」を報告したい。

中国よりも「伸びしろ」大きいインド

 ニューデリーの空気はどんよりとかすみ、排気ガスや石炭を燃やすにおいがたちこめていた。インドの大都市はどこも交通渋滞が慢性化。道路や公共交通システムが整備されないうちに高成長で自動車が急増したことが見て取れた。

 バンガロールにあるトヨタ子会社の社長、中川宏氏はインド市場の可能性について「昔の日本のようだ。子供のころ、父親が掃除機を買って帰り、母親が大喜びしていたのを思い出す。今のインドには、そうした勢いがあり、みんなが将来に明るい希望を持っている」と語った。

 国連人口基金(UNDP)の推計によると、世界の人口は10月末に70億人に達した。最多は中国13億5000万人、次いでインド12億4000万人。インドはいずれ中国を抜き、世界一の人口大国になる見通しだ。ともに高成長を続ける中国とインドだが、日本と同様に人口高齢化が必至の中国に対し、インドには若年人口が多い。労働と消費を支える生産労働人口(15歳~64歳)は今世紀の半ばまで増え続けるのがインドの強みだ。

 2010年の一人当たりの国内総生産(GDP)は中国4382ドル、インド1371ドル。インドは中国の3分の1であり、今後の「伸びしろ」はインドの方が大きい。

日本企業の進出数 6年間で3倍増

 過去5年間の年平均成長率は8.4%。自動車など製造業、IT産業などのサービス業がけん引役を果たした。インドに進出した日本企業はこの6年間で3倍に増え、今年10月で812社に達した。ただ、中国に進出した日本企業数2万2300社と比べれば、まだまだ少ない。10年の貿易額も日印は147億ドル、日中は20倍以上の3019億ドル。

 インドの国別貿易額を見ても、アラブ首長国連邦(UAE)など中東諸国、欧米、中国が多く、日本の影は薄い。日本の経済界にとって、インドはなお遠い存在なのだろう。

 今年8月には日印経済連携協定(EPA)が発効した。インドのシャルマ商工相は11月初め、われわれ日本人記者団との会見で「日本との貿易額を15年までに250億ドルにしたい」とEPA発効後の目標を掲げてみせた。

インフラ整備計画に日本はどう関わるのか

 インドは第12次5カ年計画(12年4月~17年3月)で1兆ドル(約78兆円)に上るインフラ整備計画を表明している。商工相はインフラ整備についても「日本は主要な経済パートナー」として日本からの投資を歓迎する意向を示した。


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