米国のバイデン副大統領が中国を訪問し、習近平国家主席や李源潮副主席、李克強総理といった指導者と会談した。日本では副大統領が中国側に防空識別圏の問題について強く言ってくれるものとの期待が出ていたが、ふたを開けてみると彼が中国に強く出た気配はなく、日本側の「期待外れ」に終わった感を拭えない。それもそのはずだ。中国は米国の最大の債権国で、1兆2770億ドル分もの米国債を持っているし、互いにトップ3に入る貿易相手国で、経済的相互依存関係はますます深くなりつつある。
中国に対する融和的態度への転換では英国がより顕著だ。キャメロン首相が2日から6日まで訪中したが、昨年5月にダライ・ラマ14世と会談して冷え込んでいた両国関係を改善させるべく、チベット問題を棚上げして大規模な財界代表団を引き連れて積極的な経済外交を展開している。中国側もそれに対して飴を用意し、取り込みを図っている。10項目を超える契約に調印したほか、ジャガー・ランドローバーの10万台分、額にして45億ポンド(73億8000万ドル)規模の契約も発表した。
「西側“老幹部”の中国ビジネス」
中国の成長は世界各国との結びつきも強め、国や企業同士の相互依存関係は深まっているが、その一方で軍備の拡張ももたらし日本やフィリピン、ベトナムなどと領土、領海係争も引き起こしている。経済の相互依存が深まる一方で安全保障問題が先鋭化するというあい反する二つの傾向が同時に起きている。
経済、ビジネスと安全保障の二律背反的な展開はこの問題への対処を難しくしている。その間隙を突くかのように中国は日本を含む欧米の高官や元高官に人参をぶら下げるように中国ビジネスへの参加をチラつかせ「中国の古い友人」として取り込みを図る。めでたく「古い友人」と認められた元高官が人権や民主化、少数民族問題、安全保障の問題で中国に異議申し立てをすることはない。
こうした背景を知るのにとても良いレポートが、アカデミックの色彩を帯びたニュース解説サイト「観察者ネット(観察者網)」に掲載された。欧米の元政府高官たちが携わる中国ビジネスについて書かれた「西側“老幹部”の中国ビジネス」という記事である。
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【2013年12月4日 観察者網(抄訳)】
イギリスのキャメロン首相が12月2日、北京に到着した。史上最大規模の貿易代表団(150人ともいわれる:筆者)を引き連れての訪中だった。3日昼には英国の在中大使館はマイクロブログ(微博)でキャメロン首相とネット通販大手のアリババ・ドットコムの馬雲CEOが参加した調印式典の写真を公表した(ちなみに2人で仲睦まじくセルフ撮影したスナップショットもある:筆者)。