多くの西側諸国の政治家たちは退職してから中国でのビジネス展開を進めている。これは自分のためでもあり、彼らの国のためということもあろう。以下で西側の「老幹部」たちの中国ビジネスを見てみよう。
キッシンジャー元国務長官:HP社の中国進出を後押し
キッシンジャー氏の中国訪問は80回近くにも及び、そのうち多くがプライベートでの訪問で、多くがビジネスの性質を帯びる。彼は1982年に自分の名前を冠したコンサルティング会社キッシンジャー・アソシエイツ(Kissinger Associates Inc)を設立した。(1)ある国への投資を欲するクライアントがいたら対象国を分析し、進出の是非をコンサルティングする。(2)進出する場合は外交経験を利用して当該国での「人探し」の手伝いをする、という。
顧客にとってキッシンジャーという名前は信用を意味し、自分では発掘しえない情報や人脈を意味する。ただ年間のクライアントは20社前後に限られ、その目的も、政治的リスクを避けるため純粋なビジネスに限定される。
招商銀行とアメックス
キッシンジャー氏が中国の各界で「古い友人」とみなされれば、ビジネス界で独自の影響力を発揮できるだけでなく、彼が公的な仕事を引退してから中国において活動を展開する中でのもっとも理想的な選択肢でもある。中国の最も早期の合資企業の一つであるヒューレットパッカード(HP)社が中国に来たのもまさに彼が後押しした結果だった。
1979年に鄧小平氏がキッシンジャー氏に会った際に中国は正に近代化を進め、技術を進歩させイノベーションを起こすことが必要で、鄧は中国と協力できる米国のハイテク企業を推薦してもらえないかと尋ねた。この時にキッシンジャー氏はHP社を推薦したのだった。HP社のCEOだったデビットパッカード氏は代表団を率いて中国を訪問し、指導者たちの接見を受け、電子工業省や航空宇宙省といくつかのプロジェクト契約を結んだ。
2003年11月にキッシンジャー氏は中国人民外交学会の招待を受け、39回目の中国訪問を成し遂げた。JPモルガン社の顧問としてキッシンジャー氏は、同社のCEOであるウイリアム・ハリソン氏らを率いて訪れたが、記者会見場では「不本意だ」と態度を固くし、「特別な友達を連れて来ても来なくても、中国に来て話すのは皆ハイレベルのマクロの国際情勢や米中関係であり、今日のような比較的具体的で技術的な問題について話すのは初めてだ」と当惑しながら答えた(ビジネスに後ろめたさを感じるポーズではなかろうか:筆者)。