2024年11月21日(木)

中国メディアは何を報じているか

2013年11月22日

 インターネットの普及は堅固を誇ってきた中国の一党支配体制に大きな打撃を与えているようだ。中国の共産党政権はここ数年多発する集団騒擾(騒乱)事件の火消に追われ続けている。騒擾事件に発展する前に世論の統制にも力を入れている。しかし、携帯電話によってネットに接続できるようになったことで誰もが政治に対して意見表明できるチャンネルを獲得したのである。市場化やインターネットの普及によって共産党の独善的な考え方、やり方に反発も増えてきた。個人の権利や財産が重視されるようになったことで国家や党への従属的な意識が薄れ始めたのだ。

 しかし、その一方で共産党政権はといえば依然として指導部の政治思想を官僚機構全般に学習、浸透させようと莫大な費用を費やして必死にプロパガンダを展開している。軍を巡るプロパガンダも同様である。共産主義のイデオロギーにより理論武装した解放軍は中国社会において依然、政治思想面でも指導的役割を担っている。

「イデオロギーの陣地を占領せよ」

 このほど軍の機関紙『解放軍報』に軍の幹部養成大学である国防大学の劉亜洲将軍による文章が掲載され、その激しさからイデオロギー面でも軍の動揺が窺えることからこの文章を紹介したい。「しっかりとイデオロギーの陣地を占領せよ」という文章だ。

 劉亜洲将軍は軍における最高ランクである上将の位を持つ将軍(2012年7月に昇格)のうちの一人であり、かねてから軍の最高指導部である中央軍事委員会入りするのではないかと目された人物でもある。今回(習政権が成立直後の2012年11月)はその機会を逃したものの、依然「ご意見番」として中国内外から注目を浴び続けている。

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【2013年10月15日 解放軍報(抄訳)】

 習近平総書記は、イデオロギー工作は党の極めて重要な任務であり、党の前途、運命、国家の統治安定、民族が統合する力を左右すると強調した。わが軍は党の指導の下にある軍隊であり、イデオロギー工作をしっかりおこなってこそ我が軍が終始、党による指揮を受け、勝てる戦いを遂行し、人々に奉仕することを確保できる。

 積極的、戦略的に主導権を握り、イデオロギー工作を行わなければ、相手に鼻を明かされるだろう。イデオロギーの分野では西側が強く、我々は弱く、敵側が攻勢で、我々は守勢に立たされている。相手側が常にアジェンダ設定を行い攻勢をかけ、我々は対処に追われる羽目になり、防御もままならない。このままいくと問題発生も不可避だろう。だから知恵を絞り、視野を広く持ち主導権を握ることが大切だ。


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