2024年11月21日(木)

中国メディアは何を報じているか

2014年5月1日

 冀文林は2013年1月に海南省副省長に就任し、その後、ボアオ・プロジェクト責任者となり、大きな動きを見せた。1年も経たずに1000畝〔ムー〕(合計約67ヘクタール〔東京ドーム約16個分〕:筆者)近くの土地を私企業に割譲することを承認したのだ。この私企業の出資元は李小琳女史が役員を務める香港の会社だった。中国の電力業界で活躍してきた李女史が海南の不動産業に参入し、登記額わずか1万香港ドル(約1280ドル)の小さな会社が巨額な土地資産を動かすことになったのだ。

 海南省政府の海南省発展改革委員会(開発担当部局:筆者)ページには昨年11月に同委員会が認可した「ボアオ娯楽城国際養老・養護模範地区プロジェクトの認可採択」、「同城国際リハビリ療養センタープロジェクト採択」などの文書が掲載されている。事務局に問い合わせたところ、担当者は、「海南緑健生態都市開発有限公司」への認可を明かした。同社の出資元は香港の「緑色健康発展有限公司」だった。同社の実態について担当者は審査するだけで詳細は不明と回答した。

香港人でありながら、党員でもある

 中国の電力業界で「姉御」と称される李小琳女史。香港の「紅籌株」(中国政府系の背景を持つ香港市場で上場された株式:筆者)上場企業では唯一の女性CEOであり、100億ドル近くの価値を有す中国電力(北京)を率いる。李女史は北京が海外に派遣した幹部であり、国有企業の高官であり、その資産は国有だ。彼女は大型中央企業(エネルギー、軍需など国の基幹産業は国有であり、その中心的な企業113社が中央企業と称され、国有資産監督管理委員会〔省庁〕の管理下にある:筆者)の幹部であると同時に私企業の役員でもあるわけだ。中国国内に身分を持つと同時に香港の永住権も持つ。香港人でありながら、党員でもある。

 李女史は香港の私企業の役員として海南省の土地開発に目標を定め、外資の身分で海南省に投資会社を登録したというわけだ。同社はわずか3カ月で海南省から5つの土地プロジェクトの認可を受けたのだ。資本たった1万香港ドルの企業が、百億元(約16億ドル)を超える土地を動かし、派手な開発劇を繰り広げようとしている。ちなみに「緑色健康発展開発」社は彼女が采配を振るう「赤い上場企業」中電新能源が入る華潤ビル敷地内にある。

 理解に苦しむのは国有資産のプロジェクトの土地獲得で私企業が参入していることだ。国有企業が香港で上場する中電国際と中電新能源のトップである李小琳女史は、国有企業である中国電力投資集団公司の常務副総経理でもあり、党中央組織部が管理する官僚でもある。香港の永住権も、帰郷証も保有している。しかし、国内の大型中央企業の高官で党組織メンバーなら本来、香港永住権の保有は許されていないはずだ。李女史は政府高官の身分と私人の身分を持って香港と中国の間でビジネスの海を自由に泳ぎ回っている。


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