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2014年5月23日

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弓野正宏 (ゆみの・まさひろ)

早稲田大学現代中国研究所招聘研究員

1972年生まれ。北京大学大学院修士課程修了、中国社会科学院アメリカ研究所博士課程中退、早稲田大学大学院博士後期課程単位取得退学。早稲田大学現代中国研究所助手、同客員講師を経て同招聘研究員。専門は現代中国政治。中国の国防体制を中心とした論文あり。

 我々は当然主権を争うべきであり、領土は一寸たりとも譲歩できないと考えるが、係争を経て獲得した領海がめちゃくちゃな状態なら祖先たちは怒り心頭に達するだろう。だから隣国と領海問題で交渉を進めると同時に違法操業、開発を取り締まる必要もあるのだ。

* * *

【解説】

 石油産業グループが既得権益層を形成し、利益集団として政治的影響力を行使することは理解しやすいが、今回紹介した文章では漁業、特に絶滅に瀕するウミガメやシャコ貝捕獲を通じても利益集団が形成される様子が描かれている。ただ石油業界と異なり、原始的で規模は小さくプチ利益集団というようなものだが。

 絶滅に瀕する動物だけでなく通常の漁業でも同様のことがいえるかもしれない。貪欲で旺盛な中国漁民の前に周辺諸国の漁業関係者や政府はたじたじである。こうした彼らのアグレッシブさが日中で衝突にまで発展したのが、2010年に起きた海上保安庁による中国漁船拿捕事件だ。

 中国漁民の貪欲さは韓国周辺海域でも同様に見られる。セウォル号の沈没捜索で手が離せない韓国海上警察の間隙をついて中国漁船は韓国周辺海域にも進出して我が物顔に漁を行っているという報道もある。中国当局は自国の主権ばかりを国民に学習させるのではなく、他国の主権を尊重することや資源保護という義務についても啓蒙を図るべきなのだ。

 今回南シナ海で起きた紛争が単なる海洋主権の問題として取り上げられるなら、それこそ中国は海軍艦艇や巡視船を繰り出して主権の主張を繰り返すが、この問題は単なる主権帰属の問題としてだけでなく、海洋資源を巡る世界的な問題として対応する必要がある。中国政府は資源を採り尽くすのではなく、持続可能な発展が求められていることを漁民に理解させる義務がある。また、海南島など沿岸部で取締りを強化するだけでなく、漁民が海洋資源を持続的に有効に使う方法も模索すべきであろう。中国には主権擁護といった曖昧模糊な概念ばかりでなく、地に足の着いた政策実施を求めたい。

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