2024年12月2日(月)

中国メディアは何を報じているか

2014年5月23日

 中国による南シナ海の西沙諸島で強行された石油掘削事業に端を発する巡視船の衝突でベトナム国内では反中世論が沸騰し、騒乱に発展し、死者まで出る騒ぎになっている。同様にフィリピンとの関係でも中国の漁民が絶滅に瀕しているウミガメを船に載せていたのをフィリピン当局が拿捕し、起訴したことから激しいやり取りに発展している。

 どちらのケースにも中国外交部はベトナム、フィリピンそれぞれに対して強い調子で非難する声明を出した。中国政府の基本的なスタンスはどちらも中国の領海内での作業であるため、ベトナム、フィリピンにとやかく口出しされる筋合いはなく巡視船による「妨害」は断じて許しがたい、というものだった。もともとは中国側の一方的行動から激化したにもかかわらずだ。

 ただどちらのケースも中国政府がこうした地域で意図的に紛争を煽っているというよりもむしろ漁民、石油開発会社が作業を強行したために政府が主権保全の名目で彼らを擁護せざるを得ない状況に追い込まれている様子も窺える。もちろん漁民や石油業界の行為と政府の相関関連の有無は今後更に注視する必要はあろう。

「中国漁民は南シナ海で何を採っている?」

 特に中国漁民の所構わぬ行状は周辺諸国だけでなく、中国国内からも疑問の声が上がっている。そこで今回は刊行されて間もない『壱読』という雑誌のウェブ版に掲載された「中国漁民は南シナ海で何を採っている?」という記事を紹介したい。

 同記事は中国国内からの理性的で批判的な論評が珍しいこともあって海外華僑系ネットにも取り上げられた。鳳凰網をはじめ、様々な中国語で中国事情を海外華僑に紹介する「文学城」サイトや共産党政権への反対を呼び掛け、決起を促す「中国ジャスミン革命網(茉莉花革命网)」さえも文章を転載した。中国からアクセスできないこうした外国サイトには「中国漁民は確かに憎たらしい」という副題もつけられたほどだ。「文学城」サイトに掲載されたこの記事はわずか数日で10万超のアクセス数を記録した。

 尚、この『壱読』誌は2012年8月に発刊され、そのスタイリッシュな装いと野心的な話題発掘記事で今後要注目の雑誌である。興味深いのは、雲南省麗江市宣伝部の監督下に置かれ、同市の文学芸術界連合会が発行している雑誌だということだ。

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【2014年5月13日『壱読』誌ネット版(抄訳)】

 フィリピンに拘束されている中国の漁民は、その船上に500匹のウミガメが発見されたことから環境保護違反の罪で起訴される公算が大きい。(その後9人を起訴し、未成年だった2人を送還した:筆者)。


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