国際野生動物取引モニターネットワーク(TRAFFIC)の概算では、2000年から2008年にフィリピン、マレーシア、インドネシアといった国々で中国人によるウミガメ案件が10件起きた。(発見摘発されたものだけだ:筆者)
シャコ貝を採るためサンゴ礁を爆破
ウミガメだけでなく、シャコ貝もまた南シナ海での違法操業の対象となっている。「貝類の王者」と呼ばれ、象牙のように純白の貝殻が工芸品や装飾品に使われ、地元名士たちより数珠などに好まれて使われている。シャコ貝は金儲けの「金の成る樹」になっており、ウミガメと同様に潭門鎮がシャコ貝の捕獲や加工販売面の集積地となっている。
潭門鎮で貝殻工芸品店は200店舗ほどあり、従業者は2000人超にも上り、年間生産高は2、3億元(32億円~48億円:筆者)に達するという。2012年、琼海市政協会議(参議院議会に相当:筆者)は潭門鎮に視察察団をわざわざ派遣して貝殻産業の発展状況を視察し、「市場発展の潜在力は巨大だ」と結論付け、「(産業を)さらに強化すべき」とさえ提案している。その年の11月には海口市で開催された「中国国際ファッション博覧会」では「黄岩島(英語ではスカボロー)のシャコガイの玉」は海南省の十大観光商品にもランクされたのである。
業界関係者によると、一つ、1メートル程度のシャコ貝の貝殻価格は、数年前の2、3千元(3万2000円、4万8000円:筆者、以下同)から現在7、8万元(112万円、136万円)程度にまで高騰している。販売価格も同様に今年2月の潭門鎮での競売で工芸品として70万元(約1120万円)という高価で競り落とされた。
シャコ貝はリッチになれる希望の星だが、同時に保護を必要とする品種でもある。早くは1983年に絶滅の恐れのある野生生物の国際取引を規制する「ワシントン条約」(CITES)が、シャコ貝を世界的に稀有な品種の海洋生物と認定し、輸出を禁止した。我が国の「国家重点保護水生野生動物名簿」でシャコ貝も国家の一級保護水中野生動物と規定している。そのため、シャコ貝を採るのが違法なだけでなく、工芸品としての販売も違法だ。
西沙諸島海域で大きなシャコ貝は既に消滅し、ほんのわずかだけ中沙諸島と南沙諸島海域で見かけることができる。生きたシャコ貝の捕獲が難しいため、違法捕獲者たちは死んだものでも引き上げる。時として爆薬でサンゴ礁を吹き飛ばすこともあり、多くのサンゴ礁が破壊され、サンゴの残骸が残っている。